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トヨタ自動車が、富士山麓で“街づくり”を始める。人やモビリティー、住宅などのモノや情報をネットでつなぐ「コネクテッドシティー」だ。都市開発で先行する米グーグル(Google)陣営とは、データに対する考え方が大きく異なる。トヨタはいきなりデータビジネスを志向せず、自動運転車など端末利用でリアルな地盤を固める。

 米グーグル(Google)よりも2年以上遅れており、トヨタ自動車に勝ち目はない─。トヨタが2020年1月に発表したコネクテッドシティー構想に対する反応の1つだ()。

表 トヨタとGoogleが手掛ける都市計画の比較
都市のデータを収集する構想や網目のように道路を配置する点などは共通する。(画像:トヨタ自動車、Sidewalk Labs)
表 トヨタとGoogleが手掛ける都市計画の比較
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 Googleの親会社である米アルファベット(Alphabet)は2015年にサイドウォーク(Sidewalk Labs)という会社を設立。2017年10月にはカナダ・トロントからコネクテッドシティー事業を落札したことを明かした。

 人々の暮らしを支える全てのモノやサービスを情報でつなげ、街全体をデータで管理することを目指す。データを中心とする都市開発の構想はトヨタのプロジェクトにも共通するもので、発表時期を切り取ればGoogle陣営が先手を打ったのは事実である。

 だが、Sidewalkのプロジェクトは当初の予定から遅れ、まだ建設を始められずにいる。開発規模も縮小された。つまずいた原因は、都市データの収集に野心を見せすぎたから。収集したデータは「都市の向上のため使う」(Sidewalk)と約束しているが、プライバシー面で市民の強烈な反発を受けている。

AIの価値はアクチュエーターで決まる

 トヨタが静岡県裾野市に「Woven City(ウーブン・シティ)」と名付けたコネクテッドシティーの建設に着手するのは2021年初頭。データ収集は狙いの1つだが、まずは自動運転車やAI(人工知能)などの開発を進める注1)

注1)トヨタはGoogle陣営のつまずきを参考に、Woven Cityを私有地に建設することを決めた。2020年内に閉鎖されるトヨタ自動車東日本の工場跡地を活用する形で、実証都市を造り上げる。

 GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)に都市を牛耳られずに街づくりを進めるため、データの受け皿となる「都市OS」も自ら用意する注2)。都市OSにデータが蓄積されるようになれば、自動車メーカーの枠を超えた“総合企業"への転身が現実味を帯びてくる。

注2)Google陣営もカナダ・トロントを皮切りに都市OSの構築を目指している。

 トヨタ社長の豊田氏が「自動車を造る会社からモビリティーカンパニーにモデルチェンジする」(同氏)と宣言したのは2018年。今回の街づくりは、その構想をさらに一歩進める重要な一手となる。

 Woven Cityでは、自動運転やMaaS(Mobility as a Service)、パーソナルモビリティー、ロボット、スマートホーム、AIなどを導入・検証できるようにする(図1)。AIや自動運転のアルゴリズムに関しては、Googleにも強みがある。だが、「優れたアクチュエーターがなければ、ソフトウエアは『絵に描いた餅』になってしまう」(あるAI技術者)。その点で、アクチュエーターの集合体である自動車を高品質に大量生産してきたトヨタに優位性が出てくる。

図1 トヨタが「コネクテッドシティー」に導入する次世代技術の例
図1 トヨタが「コネクテッドシティー」に導入する次世代技術の例
これまでに研究開発してきた多くの技術が都市開発に活用できそうだ。トヨタ単独では用意できない技術要素は、他社との共同開発を積極的に進める方針である。(画像:トヨタ、日経Automotive)
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