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クルマが「所有」から「利用」に向かい、価値の中心はソフトウエアやデータに移ってきた。車両の大量生産というビジネスモデルが通用しなくなり、各社は次の一手が求められる。いち早く収益につなげたのは、画像処理チップというハードウエアを主力事業としてきたMobileye。ホンダやトヨタ自動車、メガサプライヤーなどもサービス展開を模索する。

 「データビジネスへの参入を表明してからまだ1年だが、収益を上げ始めている」。手応えを口にするのは、イスラエル・モービルアイ(Mobileye)のVice President Mapping & Localizationとしてデータ事業を統括するTal Babaioff氏である。同社の主力事業は自動ブレーキ向け車載カメラに内蔵する画像処理チップの製造・販売だが、2019年1月にサービス事業の展開を宣言していた。

 クルマが「所有」から「利用」に向かう中で、ビジネモデルの転換が本格化してきた。クルマの価値はハードウエアからソフトウエアやデータ、サービスに移る。Mobileyeに限らず、自動車メーカーや部品メーカーも新たな収益源の確保に向けて変化を起こす。

600万台の車両からデータが集まる

 Mobileyeが「これからの100年」に向けた成長の源泉に据えるのが、同社が手掛ける画像処理チップ「EyeQ」シリーズである。EyeQチップを搭載する車両から車両周囲のデータを吸い上げる。Mobileyeは、自動車メーカー6社とデータの提供契約を締結済みだ(図1)。公表しているのは日産自動車とドイツBMW、同フォルクスワーゲン(Volkswagen、VW)である。中国メーカーとも契約した。2020年内には世界で200万台規模に、2022年には600万台を超える車両からデータを収集できる体制を構築する。

図1 Mobileyeのデータ収集端末は2022年には600万台超に
図1 Mobileyeのデータ収集端末は2022年には600万台超に
Mobileyeの画像処理チップを搭載する、BMWや日産自動車、VWなどの車両からデータを収集している。図はMobileyeのデータを基に日経Automotiveが作成。(画像:BMW、日産自動車、VW)
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 データ事業として収益を上げ始めた事例の1つが道路工事への活用である。車載カメラで撮影した画像から、道路の凹みを検出する(図2)。凹み具合を5段階で評価し、地図データに情報を統合していく。

図2 カメラで道路の凹みを把握
図2 カメラで道路の凹みを把握
左の地図画像は、凹みの多い道路を赤色で表示している。イスラエルで実施した例。このデータを基に道路の改修工事を実施した。(画像:Mobileye)
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 このデータを基に改修すべき道路区間を決められる。「これまで人海戦術で工事箇所を決めていたが、データを利用することで官公庁の支出を抑えられる」(Babaioff氏)。Mobileyeが確保した収益は「データ提供者である自動車メーカーと分け合う」(同氏)という。