全3505文字
PR

 韓国の3大輸出品目は「半導体」「携帯電話」「ディスプレー」である。ラインアップ自体は長年変わらないが、その中身は技術の進化に合わせてシフトしている。半導体はメモリーからSoC(System on Chip)へ、携帯電話はフィーチャーフォンからスマートフォンへ、そしてディスプレーは液晶パネル(LCD)から有機EL(OLED)へと主役が移ろうとしている。

 サムスンディスプレー(Samsung Display)は2020年3月31日、テレビ向け大型LCDの生産を2020年末で打ち切ると発表した。韓国の牙山(アサン)市と中国の蘇州市にある大型LCD生産ラインを廃止する計画だ。この発表に先立ち、LGディスプレー(LG Display)も2020年1月に米国ラスベガスで開催された「CES 2020」で、「韓国のテレビ向けLCD生産は2020年を最後に大部分を整理する方針」と発表していた。両社の売り上げに占めるLCDの割合はいまだ高いが、「選択と集中」によってLCDからOLEDへとかじを切った。サムスンディスプレーの発表を受けて、韓国メディア各社は「OLEDで韓日中三国時代の幕開け」「サムスンディスプレーがLCD出口戦略を発表」「サムスンディスプレーは赤字のLCDを見切ってQD-OLED(量子ドットを用いたOLED)で勝負する」などと大きく報道した。

CESで6年連続「最高のテレビ」に選ばれたLG電子のOLEDテレビ(出所:LG電子)
CESで6年連続「最高のテレビ」に選ばれたLG電子のOLEDテレビ(出所:LG電子)
[画像のクリックで拡大表示]

新型コロナで早めの見切りか

 LCDからOLEDへの切り替えは、突然の決定ではない。両社共に2018年ごろから準備していた。ただし、市場ではサムスンディスプレーの大型LCD生産ライン廃止は2021年末か2022年とみていた。新型コロナウイルスの影響で全世界が不況に陥っていることから、早めに事業を再編して高付加価値のOLEDで勝負することにしたという印象もある。同社は、LCD事業部に所属している社員約3000人をQD-OLEDに配置換えするなどして雇用を維持する方針である。

 サムスンディスプレーを含むサムスン電子(Samsung Electronics)のディスプレー部門の業績は、2019年の売上高が前年比4.4%減の31兆500億ウォン(約2兆7200億円)、営業利益が同39.7%減の1兆5800億ウォン(約1386億円)だった。LGディスプレーに至っては、2019年の売上高が前年比3.5%減の23兆4755億ウォン(約2兆600億円)、営業損失が1兆3593億ウォン(約1193億円)と、営業赤字に陥っている。2017年には、サムスン電子のディスプレー部門は5兆4000億ウォン(約4736億円)、LGディスプレーは2兆4616億ウォン(約2159億円)の営業利益を稼ぎ出していたが、その後はLCDの在庫が過剰になり、価格が下落したことで業績は悪くなる一方だった。新型コロナウイルスの影響で中国のLCD工場が閉鎖され、一時期は在庫過剰が解消され価格が反騰したものの、それも長くは続かなかった。

 サムスン電子がLCD事業に参入したのは1991年。果敢な投資で日本企業を追い抜き、長年にわたって世界のトップを維持していたが、2017年にその座を中国企業に明け渡した。中国勢は、中国政府の補助金に支えられて低価格攻勢をかけながら設備投資を続けられる体力があった。その結果、大型LCD市場は“チキンレース”が繰り広げられ、売れば売るほど赤字になるという奇妙な構造になってしまった。

 2018年ごろからは、韓国のディスプレー関連人材の中国流出が止まらないという報道が目立つようになった。そして、2019年夏には、サムスンディスプレーやLGディスプレーがOLEDに集中するため、大型LCD事業の整理に向けた動きを見せていた。両社が大型LCDの生産ラインを減らし、LCD生産設備の売却を検討しているという報道が続いた。