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 東芝の「全拠点休業」は韓国でも報道され話題になった。生産調整のために工場の操業を停止するのではなく、「感染者の拡大が継続していることを踏まえ、国内グループ全体として最大限の接触削減を目指す」ために休業するという点が、日本の感染状況の深刻さを表しているとして注目された。

 韓国では新型コロナウイルス感染拡大防止に向けて、1カ月以上にわたり在宅勤務や特別休暇を実施した企業は多かったが、生産現場は防疫をしながら稼働を続けた。中国から部品が届かない、あるいは需要減で一時的に操業を停止することはあったが、感染リスク軽減のために休業するということはなかった。どの企業も、2020年1月20日に韓国を訪問した中国人観光客が新型コロナウイルスで入院したというニュースが出てからは、直ちに国内拠点の緊急防疫体制を取り始めた。

(出所:PIXTA)
(出所:PIXTA)

 韓国の疾病管理本部によると、新規感染者数は4月22日が11人、23日が8人、24日が6人、25日が10人、26日が10人と推移しており、だいぶ落ち着いてきた。26日時点の状況は、PCR検査者数が累計59万8285人、感染者数が1万728人、隔離解除(完治)者数が8717人、死者数が242人となっている。

韓国の防疫モデルを国際標準として提案

 韓国の新型コロナウイルス対策については、欧米のメディアが連日称賛記事を書き、各国政府がベンチマーキングの対象としている。そのような状況を受けて、韓国の保健福祉部と産業通商資源部(韓国の部は日本の省に相当)は4月26日、韓国の防疫モデルを国際標準として提案する準備を始めたと発表した。「検査・確診」「疫学・追跡」「隔離・治療」から成る全ての手続きと手法を「K-防疫モデル」として体系的にまとめ、国際標準化機構(ISO)に提出する。この提案には、医療従事者の感染を防ぎながら大量のPCR検査を実施できるドライブスルー検査やワークスルー検査、院内感染を防止するために感染症指定医療機関や保健所の近くに設置した移動式選別診療所、軽症者を隔離するための生活治療センターの運営方式などを盛り込む。

 韓国では感染者の動線を徹底的に把握し、公表している。具体的には携帯電話の位置情報、クレジットカード使用履歴、交通機関や街中の防犯カメラなどあらゆるデータを分析して感染者の動線から接触者を探し出し、保健所が連絡して検査と隔離を実施する。

 3月にソウル市のコールセンターで社員の半数が感染する集団感染が発生したときには、疾病管理本部はコールセンターが入居している建物に5分以上滞在した人とその接触者を探し出し、計1143人にPCR検査を実施したほどだ。これ以降、他社のコールセンターも在宅勤務に切り替えるようになった。

 動線確認は本人への聞き取り調査が基本だが、記憶が曖昧なところもあるのでそれ以外のデータも利用する。3月に構築された疫学調査支援システムによって、警察や通信事業者3社、クレジットカード会社22社が持つデータを一元的に分析できるようになり、感染者の動線を10分ぐらいで確認できるようになった。これは「検疫法と感染病の予防と管理による法律」に基づいた措置である。これまでは、疫学調査員が関係各社に情報提供を要請し、個別に分析していた。ただし、個人情報保護の観点から、同システムを使えるのは疾病管理本部と自治体の疫学調査員に限定しており、他の政府機関はアクセスできない。システムの運営も新型コロナウイルス感染の終息までとあらかじめ決めている。感染経路を明確化し、感染の疑いがある人は早期隔離することで感染拡大を防いだ。現在、感染経路が不明な事例は4~5%程度にすぎない。