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 米中貿易摩擦で半導体業界が激変している。2020年6月16日、複数の中国メディアは、中国・華為技術(ファーウェイ)が韓国Samsung Electronics(サムスン電子)に対して5G(第5世代移動通信システム)基地局向けプロセッサーの製造を委託する可能性があると報じた。米国の禁輸措置によって、ファーウェイは自社グループで設計した半導体の製造を台湾積体電路製造(TSMC)に委託できなくなったとみられている。そこで、ファーウェイはサムスン電子に協力を求め、ファウンドリー事業の拡大を目指すサムスン電子はそれに応じるのではないかというわけだ。ただし、韓国内では「サムスン電子はファーウェイの要請を受けない」という見方の方が多い。

 サムスン電子にとってファーウェイは、5G基地局やスマートフォンで競合関係にあるが、メモリー半導体の良い顧客でもある。18~19年のサムスン電子の5大取引先にも、米Apple(アップル)や米Best Buy(ベストバイ)などと共にファーウェイの名前が挙がっている。中国メディアの報道を受けた韓国メディアの取材に対し、サムスン電子は「顧客に関することなので何も言うことはない」とノーコメントを貫いた。

メモリーへの飛び火を懸念

 6月16日に韓国で開催された全国経済人連合会(日本経済団体連合会に相当する韓国の経営者団体)の専門家座談会「米中通商戦再点火、韓国企業の対応方案」でも、この報道が話題になった。座談会ではファーウェイがTSMCの代わりに韓国企業に半導体製造を委託してきても、米国との関係を考慮すればそれに応じない方が良いのではないかという話になった。登壇者は「無理にファーウェイとの取引を拡大しようとすれば、米国の規制対象がメモリー半導体にも拡大する恐れがあり、『小利大損』の結果になる」「米国でも中国でも一方の企業と関係が深くなればもう一方の国から圧力がかかる可能性がある」などと発言し、サムスン電子はファーウェイの要請を引き受けないだろうと予測した。

 米国の規制で市場シェアを失うとも思われたファーウェイだが、5G標準技術関連で最も特許を保有しているだけに、規制ばかりでは逆に米国企業への影響も出てきているようだ。6月15日、米商務省は5Gにおける米国企業の競争力を守るためにファーウェイに対する規制を一部緩和した。5Gの国際標準化に関する活動であればファーウェイとの協力を容認するというものである。5Gの標準技術に関する特許保有件数が多いファーウェイとの協力は避けられなかったとみられる。米国政府がファーウェイを規制したことで、米国企業の5Gの競争力を落としたという声もあった。

 ドイツの特許データベース会社であるIPlytics(アイプリティクス)によると、20年2月時点で5G関連特許保有ランキングの1位はファーウェイ(3147件)だった。以下、2位はサムスン電子(2795件)、3位は中国・中興通訊(ZTE、2561件)、4位は韓国LG Electronics(LG電子、2300件)、5位はフィンランドNokia(ノキア、2149件)と続く。また、米国の市場分析会社であるStrategy Analytics(ストラテジー・アナリティクス)が同年3月時点で13社を対象に、5Gの標準仕様である3GPP(Third Generation Partnership Project)のRelease 15/16への貢献度を調べたところ、ここでもファーウェイが1位だった。この調査は「5G論文提出数」「提出した論文が技術標準グループやワーキンググループに承認された数」「3GPPの技術標準グループやワーキンググループの議長職遂行経験」など5項目によって評価したもので、ファーウェイは平均9.6点(満点は10点)を獲得した。2位はスウェーデンEricsson(エリクソン)、3位はノキア、4位は米Qualcomm(クアルコム)、5位は中国移動、6位はサムスン電子だった。