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 2020年7月19日、韓国メディアは、韓国TopBattery(トップバッテリー)がコバルトフリー正極材(活物質)を開発したと報道した。同社は、リチウムイオン電池やエネルギー貯蔵システム(ESS)の開発・生産を専門とするベンチャー企業である。

 TopBatteryは新開発のコバルトフリー正極活物質を、電気自動車(EV)用バッテリーを手掛けるベンチャー企業の韓国Eurocell(ユーロセル)に供給する。Eurocellは、20年末からこの正極活物質を使ったリチウムイオン電池を電動スクーターに搭載する計画だ。

 TopBatteryの正極活物質はスピネル型マンガン系に分類されるもので、マンガンの割合を75%と従来品よりも多くし、ニッケルの割合を25%と少なくした。同社によると、通常はニッケルの割合を増やすことでコバルトフリーを目指すが、それだと電池の寿命と安全性に限界があることから、安価なマンガンの割合を増やした。この正極活物質を使った電池の重量容量密度は135mAh/g、平均放電電圧は4.7Vだという。

 TopBatteryは、13年12月に韓国で初めてESSやEV向けリン酸鉄リチウムイオン電池を開発した。その後、年36万個を生産できる自動化ラインを設立し、量産を始めた。

業界全体でコバルトフリー目指す

 現在、「バッテリーご三家」と呼ばれるLG Chem(LG化学)、Samsung SDI(サムスンSDI)、SK innovation(SKイノベーション)をはじめとする韓国の電池業界は、コバルトフリーを志向している。コバルトは埋蔵量が少ない上、今も紛争が続くコンゴの生産に依存しているため、供給が安定せず価格が上昇し続けている。EVの普及推移から30年を境にコバルト不足も懸念されている。

 世界の人権問題を調査・是正勧告している非政府組織(NGO)のAmnesty International(アムネスティ・インターナショナル)は17年、コンゴのコバルト採掘で児童労働や危険労働が放置されていると告発する報告書を発表した。19年末には国際連合児童基金(UNICEF)も、コンゴ南部の鉱山で児童約4万人が1日1~2米ドルの賃金で働いていると公表した。これらの報告によって、コバルトを利用する大手企業は「採掘の労働環境に目をつぶって安く仕入れることにしか興味がない」などと批判されるようになった。

 そこで、電池メーカーは短期的にはコバルトを倫理的な方法で確保しながら、長期的にはコバルトフリーを目指している。前出の韓国バッテリーご三家も、コバルトをはじめとする鉱物の確保に当たり、紛争鉱物問題に取り組む団体であるResponsible Minerals Initiative(RMI)に加入している。