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 最近、世界で電気自動車(EV)のリコールが相次いでいる。その原因としてやり玉に挙がっているのは、電池や電池管理システム(BMS:Battery Management System)だ。韓国では、自動車メーカーと電池メーカー、政府機関が責任の所在を巡って争う事態に発展した。EV用電池は韓国企業が大きなシェアを占めている分野だが、世界的なリコールによって中・長期でのシェア低下を懸念する声が上がっている。

BMSアップデートがリコールなのか

 論争の引き金となったのは、韓国Hyundai Motor(現代自動車)のEV「Kona Electric」のリコールだ。同社は2020年10月16日に対象車両の回収を開始。韓国国土交通部(MOLIT、韓国の部は日本の省に相当)や米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)に同車のリコールを届け出ていた。対象は、17年9月~20年3月に生産した車両。台数は、韓国販売分が2万5564台、海外販売分(北米、欧州、中国など)が約5万1000台である。

電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)における、電池/電池管理システム(BMS)に関係したリコール/火災事故
(発表資料や報道を基に作製)
電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)における、電池/電池管理システム(BMS)に関係したリコール/火災事故
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 Kona Electricでは、18年の発売以降、14件の火災事故が発生した。リコール対象車両はBMSをアップデートするほか、電池そのものについても電池セル間の過度な電圧差や急激な温度変化といった異常の兆候があれば交換するという。

Hyundai MotorのEV「Kona Electric」
Hyundai MotorのEV「Kona Electric」
(出所:Hyundai Motor)
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 だが、Kona Electricのユーザーはこの対応に満足していないようだ。ユーザーが開設した掲示板サイトでは、「BMSのアップデートを果たしてリコールと呼べるのか」という声が大きくなっている。

 その理由は、現代自動車がリコールを開始するよりも前の20年10月8日にMOLITが発表した報道資料にある。MOLITはKona Electricの火災事故原因について、「電池セル製造過程で正極と負極の間にある分離膜が損傷したことによって、完全充電した際に正極と負極の端子が接触して内部短絡(ショート)を引き起こし、火災が発生する可能性があると認められた」と発表していた。そのため、ユーザーは火災事故の原因が電池にあると認識し、「なぜすぐに電池を交換しないのか」と反発しているのだ。

 こうしたユーザーの声に、Kona Electricの電池を供給する韓国LG Chem(LG化学)は直ちに反応した。MOLITの報道発表と同日にLG化学は「現代自動車と共同実施した再現実験では火災が発生しなかった。火災事故の原因は、電池セルの不良とはいえない。MOLITは正確な原因が究明されていないのに発表した」と反論。LG化学は、現代自動車と協力して徹底的に原因を究明するという。

 報道によれば、Kona Electricの電池モジュールには、たくさんの企業が関わっている。電池セルはLG化学製だが、セルを組み合わせて電池パックにしているのはLG化学と韓国Hyundai Mobis(現代モービス、現代自動車系列の部品メーカー)の合弁会社である韓国HL Green Power(HLグリーンパワー)であり、BMSの開発元は同じく現代自動車系列の韓国Hyundai Kefico(現代ケフィコ)である。そして、Hyundai Mobisがこれらを組み合わせた電池モジュールの形で現代自動車に納品している。