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 2次電池などの先端技術分野で、日韓企業の特許紛争が増えている。今後は、韓国が国産化を推進する半導体製造用材料でも同様の争いが広がるとの見方も出てきた。韓国は、主に中小企業を対象とした支援機関を新設し、将来的な特許紛争の激化に備えようとしている。

輸出管理厳格化がきっかけ

 韓国特許庁(KIPO)は2020年11月27日、ソウル市江南区の韓国知識財産保護院内に「知識財産権紛争対応センター」を開所した。KIPOは、「日本など海外企業の特許攻撃に備えて韓国の輸出企業を支援する知識財産権の紛争専門組織を発足させた」「素材・部品・設備の国産化を進める過程において源泉となる特許を多数保有する日本企業と韓国企業の間で特許紛争が起こる恐れがある」「紛争対応に脆弱な中小企業への支援が必要であることを認識した上でセンターを運営しなければならない」などのコメントを発表した。

 同センターは、韓国Korea Advanced Institute of Science and Technology(KAIST)の諮問団と協業し、主に中小企業の特許紛争を積極的に支援する。諮問団は、KAISTの教授ら約100人が素材・部品・設備の国産化に向けて中小企業の技術開発を促進するために設立した組織である。19年夏に日本政府が半導体製造用材料3品目(レジスト、フッ化水素、フッ化ポリイミド)の輸出管理を厳格化したことが、設立のきっかけになっている。

(出所:Anatoly Morozov/PIXTA)
(出所:Anatoly Morozov/PIXTA)

 KIPOは同年8月に「輸出規制対応知識財産権支援団」を発足し、日本の輸出管理厳格化による素材・部品・設備関連の中小企業への影響を調査し続けてきた。そして、20年7月に産業通商資源部(韓国の部は日本の省に相当)と「知識財産権基盤産業政策樹立のための民官協議会」を共同で開催し、素材・部品・装備に関連した特許を活用した技術開発の成果を共有するともに、知識財産の活用で成長している中小企業のニーズに応えるべく、特許のビッグデータ分析で研究開発の方向性を助言するなど、技術開発を促進してきた。中小企業の研究開発は、従来の実績や社内専門家の経験に依拠していることが多いが、ビッグデータ分析によって思いがけない方向性を見つけるのに役立っているという。他にも、中小企業が特許を担保に融資できる金額を拡大するなど、知的財産権重視の施策を取ってきた。

 新設の知識財産権紛争対応センターは、こうした支援体制をさらに強化する施策である。主な業務は(1)素材・部品・設備に関連した特許紛争へのワンストップ支援、(2)KAIST諮問団との協業による特許紛争支援、(3)海外での韓国ブランド侵害の防衛支援、の3つである。

 特許紛争に関しては、これまで主に米国企業によるものが監視対象だったが、その対象を日本や欧州、中国にも拡大する。さらに、紛争の内容についても特許侵害訴訟に限定せず、無効審判や異議申し立ての情報も収集する。

 韓国の中小企業に対する特許侵害訴訟や無効審判、異議申し立てがあった場合、各企業に合わせたプログラムに基づいて支援する。対象企業は、素材・部品・設備関連を優先する。従来は監視組織と支援組織が分かれていたことから連携に時間がかかっていたが、新設の知識財産権紛争対応センターでは、監視から戦略策定まで一連の支援策をワンストップで提供する。支援期間は最大3年。費用は年間1億ウォン(約950万円)以下とすることで、中小企業の負担を軽減する。