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 車載半導体不足で世界の自動車メーカーが生産停止するなど、深刻な問題が起きている。そんな中、韓国Samsung Electronics(サムスン電子)は車載半導体への投資を加速させている。同社は米Tesla(テスラ)との連携を深め、最先端プロセスの半導体生産で先行する台湾積体電路製造(TSMC)を追撃する構えだ。

 2021年1月25日、韓国メディアは、サムスン電子のファウンドリー事業部とテスラが5nm EUV(極端紫外線)プロセスのIVI(In-Vehicle Infotainment)用半導体を開発していると報じた。これまでテスラはIVIに米Intel(インテル)の「Atom」系プロセッサーを使っていたが、それをサムスン電子との共同開発品に切り替えるのではないかと予想されていた。

 サムスン電子がテスラとの連携を深めようとする背景には、半導体受託生産を巡るTSMCとの激しい競争がある。

 サムスン電子は現在、テスラの自動運転コンピューター「Hardware 3.0(HW3)」の半導体を生産している。この半導体は、米国オースティン工場の14nm フッ化アルゴン(ArF)プロセスで生産している。ところが、HW3の次世代版であるHW4の半導体は、TSMCが7nmプロセスで生産すると報道されている。

 つまり、サムスン電子にとってテスラに5nmプロセスを訴求することは、IVI用半導体にとどまらず自動運転用半導体の生産も受託するために重要なのだ。ただし、テスラはEVの電力効率向上に向けて、7nmの次は5nmを飛ばして3nmを採用するのではないかとの分析もある。サムスン電子とテスラが共同で5nmプロセスの半導体を開発しているとしても、車載半導体で覇権を握るのは、サムスン電子とTSMCのうち3nmプロセスの量産で先行したほうだろう。

 台湾の調査会社である集邦科技(TrendForce)によると、20年10~12月における半導体ファウンドリーの市場シェアはTSMCが55.6%で圧倒的な1位、サムスン電子が16.4%で2位だった。21年の市場シェア予測も、TSMCが54%、サムスン電子が18%と、差は大きい。ただし、10nm以下の微細プロセスでは、TSMCとサムスン電子の比率が6対4と、差が縮まるという。

 サムスン電子は、18年10月にプロセッサーとイメージセンサーを発表して車載半導体事業を強化すると宣言して以降、自動車メーカーへの売り込みを進めてきた。19年1月に、ドイツAudi(アウディ)にIVI用半導体「Exynos Auto V9」の供給を開始。20年1月には、米Harman International Industries(ハーマン・インターナショナル・インダストリーズ、17年に買収完了)と共同開発した5G(第5世代移動通信システム)対応のテレマティクス制御ユニット(TCU:Telematics Control Unit)が、ドイツBMWの電気自動車(EV)「iNEXT」(21年発売予定)に採用された。サムスン電子は、先進運転支援システム(ADAS)やIVI、テレマティクスなどの分野を中心に攻勢をかけている。

サムスン電子の車載プロセッサー「Exynos Auto V9」(出所:サムスン電子)
サムスン電子の車載プロセッサー「Exynos Auto V9」(出所:サムスン電子)
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「Exynos Auto V9」を使ったIVIシステム。「CES 2019」に出展していた(出所:サムスン電子)
「Exynos Auto V9」を使ったIVIシステム。「CES 2019」に出展していた(出所:サムスン電子)
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