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 韓国Hyundai Motor(現代自動車)は2021年2月23日、中型クロスオーバー電気自動車(EV)「IONIQ 5」を公開した。グループで展開するEV専用プラットフォーム「E-GMP(Electric-Global Modular Platform)」を初めて適用した車種である。E-GMPは、米Apple(アップル)が開発中のEV「アップルカー」を巡る報道でも注目されていた。

「IONIQ 5」
「IONIQ 5」
(出所:現代自動車)
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 IONIQ5は、韓国内の事前予約初日に2万4000台ほど売れた。21年の販売目標である2万6500台を難なく達成できそうだ。同車は、世界のEV市場で現代自動車の実力を占う試金石とみられている。現代自動車は、セダン「同6」や大型SUV(スポーツ多目的車)「同7」も投入してEVのラインアップを増やす計画である。

LGの電池が火災事故の原因か

 IONIQ 5公開翌日の2月24日、韓国国土交通部(韓国の部は日本の省に相当)は自動車安全研究院と共同で実施した、現代自動車のEV「Kona Electric」の火災事故に関する調査の結果を発表した。電池セルの製造不良(負極タブの折り畳み)による火災発生の可能性を確認したという。同様に原因とみられていた電池セルの分離膜損傷に関しては、再現実験の途中であり、今のところ実験では火災が発生していない。

 国土交通部は、韓国で最初のKona Electricの火災事故が発生してから2カ月後の19年9月に調査を始めており、今回初めて結果を発表した。現代自動車は、リコール関連費用の総額(韓国内向け車両と輸出車両)を1兆ウォン(約954億円)と推定。最終的な費用は、電池のサプライヤーである韓国LG Energy Solution(LGエネルギーソリューション)と分担した上で計上するという。

 これに対し、LGエネルギーソリューションは直ちに反論した。「リコールの理由になった電池セルの製造不良は、再現実験では火災を引き起こさなかったので直接的な原因とはいえない」「BMS(電池管理システム)の充電マップについて、当社が提案したロジックを現代自動車が誤って適用したのを確認した」などと主張し、電池は火災事故の原因ではないという立場を取っている。

 現代自動車は火災事故の原因を電池と判断し、21年3月29日からKona ElectricやEVセダン「IONIQ Electric」、EVバス「Elec City」のBSA(Battery System Assembly)を交換すると発表した。対象車両は、LGエネルギーソリューションがLG Chem(LG化学)から分社する前の17年9月~19年7月に中国・南京の工場で生産された電池セルを搭載したもの。この電池セルには、両極端子に絶縁コーティングが施されていない。対象台数は、韓国内が2万6699台、国外が5万5002台である。現代自動車としては、火災事故の原因をLGエネルギーソリューションの電池ということにして、早くリコールを終わらせ、IONIQ 5の販売に力を注ぎたいようだ。

 リコールの原因や費用分担を巡る現代自動車とLGエネルギーソリューションの攻防はまだ続きそうだが、韓国ではこのリコールでSK innovation(SKイノベーション)が注目されている。