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 電気自動車(EV)の電池製造を増産すべく、2021年1〜3月に大規模な投資計画を明らかにした韓国LG Energy Solution(LGエナジーソリューション)と韓国SK innovation(SKイノベーション)、韓国Samsung SDI(サムスンSDI)の韓国電池3社。だが各社の株価が21年3月に入り大幅下落している。生産能力の増強により、中国寧徳時代新能源科技(CATL)をはじめとする中国勢に対抗し、EV市場で主導権を狙うはずだった。だが大口納入先の方針転換と、米国際貿易委員会(ITC)の判決をめぐる訴訟リスクが影を落としている。

 LGエナジーソリューションの親会社であるLG Chem(LG化学)の株価(終値)は、米国における投資計画発表直後の21年3月15日には96万6000ウォンまで急騰したが、その後、急落した。同3月23日の終値は77万5000ウォンと15日から20%以上も下落している。同社の米国における投資計画は、25年まで5兆ウォン(約4840億円)以上を投資し、年産70GWh以上のバッテリー生産能力を追加確保するという大規模なプランだった。

 1兆2000億ウォン(約1160億円)を投資し、年産30GWh規模のハンガリー第3工場を新設すると21年1月に発表したSKイノベーションも、同3月に入り株価が下落している。21年2月2日に31万7000ウォンと高値を付けたが、同3月23日には20万2000ウォンまで急落した。

 ハンガリーのバッテリー工場に約1兆ウォン(約970億円)を新規投資し、生産規模を年産最大50GWh に拡大すると21年2月に発表した韓国Samsung SDI(サムスンSDI)も同様だ。21年2月26に67万4000ウォンだったのが、同3月23日には62万4000ウォンまで下落した。

VWグループが自前工場に転換、LGとSKに打撃

 韓国メディアや証券業界の分析によると、株価下落の理由は大きく2つある。まず世界第2位のEV販売台数をほこるドイツのVolkswagen Group(フォルクスワーゲングループ)が21年3月15日、新たなEV向け電池の採用計画を発表した影響だ。

 VWグループはこの日、自社EV向けに、規格を統一した角形電池セル(Prismatic Unified Cell)を23年から導入することを明らかにした。30年には自社EVモデルの80%に搭載する計画で、EVシフトを推進させるため、自前で年産40GWhのEV用電池セル工場を欧州6カ所建設するという。年産40GWh×6カ所は相当な生産量だ。

 VWグループのEVプラットフォーム「MEB (Modular Electric Drive Matrix)」向けの電池供給において現在、LGエナジーソリューションは欧州市場で1位、SKイノベーションが同2位である。韓国電池3社のうち、EV向け角型電池セルを生産しているのはサムスンSDIだけだ。LGエナジーソリューションとSKイノベーションの主力はラミネート型の電池セルである。EV向け電池は3〜4年先の分まで受注しているので今すぐ供給が切れるわけではないが、VWグループが角形電池セルに移行することで、韓国電池3社への影響は不可避だろう。だからこそ株価が急落したわけだ。

 VWグループは前述の発表会で、EV普及のためには電池製造費用を安く抑えることが重要と強調した。鍵を握るのは、VWグループが19年に株式20%を取得したEV向け電池を製造するスタートアップ、スウェーデンNorthvolt(ノースボルト)とみられる。ノースボルトは角型電池セルを生産しておりこの日、VWグループと140億ドル(約1兆5300億円)規模の受注契約を結んだことが明らかにされた。