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 韓国LG Electronics(LGエレクトロニクス)は2021年4月5日、同年7月31日に携帯電話事業部門の生産および販売を終了すると発表した。2画面スマホなど、独特の形状の製品を生み出すことで知られたLGエレクトロニクスだが、スマホ事業は長く赤字が続いていた。同社がスマホに代わって活路を見いだすのが車載電装事業だ。市場はスマホ事業撤退を歓迎しており、同社の株価は上向きに転じている。

 LGエレクトロニクスは撤退の理由として、「スマホ事業の競争深化および持続的な事業不振」、「内部資源の効率化による核心事業への集中および事業構造改善」、「選択と集中による全社事業ポートフォリオの改善」の3つをあげた。スマホ事業の技術資産とノウハウは、既存事業の競争力強化と新事業のために積極的に活用するという。事業終了で短期的には売上高が減少するが中長期的には財務構造の改善効果が期待されるとした。スマホ事業終了でもリストラはせず、スマホ事業の従業員は他の事業部や系列会社へ再配置し雇用を維持。取引先の被害補償についても今後発表するという。

累積赤字は約5兆ウォン、出遅れ挽回ならずついに撤退

 1995年に始まったLGエレクトロニクスの携帯電話事業だが、2015年4〜6月期から赤字となり、20年10〜12月期まで23期連続で赤字を記録していた。累積赤字は実に約5兆ウォン(約4860億円)にのぼる。

 韓国内ではLGエレクトロニクスがフィーチャーフォンに固執した点が赤字の決定的要因と分析されている。フィーチャーフォン時代は、LGエレクトロニクスが世界の販売台数シェアで3位だったほどで、韓国Samsung Electronics(サムスン電子)よりも早くタッチセンサーや高画素カメラ、MP3プレーヤー機能付き端末を発売していた。

LGエレクトロニクスはデュアルディスプレー搭載スマホなど独特の形状の機種を開発してきた
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LGエレクトロニクスはデュアルディスプレー搭載スマホなど独特の形状の機種を開発してきた
(撮影:日経クロステック)

 しかし07年の米Apple(アップル)「iPhone」登場以降、韓国を含め世界市場ではスマホが主流になった。しかし当時、LGエレクトロニクスはフィーチャーフォンを発売し続け、スマホ市場への参入が出遅れた。

 出遅れを挽回しようと、デュアルディスプレーや超広角カメラ、フロントデュアルカメラ、回転式ディスプレー、高音質を実現するHi-Fi Quad DACなど、特徴的な機能を載せたスマホで差異化を図ろうとした。しかし独特過ぎる形状が多く、ハイエンドモデルでも普及モデルでも利用者が離れてしまった。

 21年1月には既に同社のスマホ事業売却説が報道されていた。韓国KBSによると、LGエレクトロニクスのスマホ工場がベトナムにあることから当初同社は、ベトナムの複合企業、Vingroup(ビングループ)かドイツの自動車大手Volkswagen Group(フォルクスワーゲングループ)に売却しようとしたという。だがモバイル技術の知財はLGエレクトロニクスが保有するという条件だったことから、交渉が決裂したようだ。

 韓国内でライバルとなるサムスン電子は早速に、LGエレクトロニクスの5Gスマホ「V50」を販売代理店に持ってくると自社製「Galaxy S21」「Galaxy Z Fold2」といった最新スマホをさらに7万ウォン(約6800円)値引く販売施策を始めている。