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 韓国Samsung Electronics(サムスン電子)による車載半導体大手オランダNXP Semiconductors(NXPセミコンダクターズ)の買収説が再び浮上している。サムスン電子は2021年1月、決算発表の場で3年以内に企業買収計画があることを明らかにした。それから韓国メディアは、買収先候補としてNXPのほか、米Texas Instruments(テキサス・インスツルメンツ)、日本のルネサス エレクトロニクスなどの名を挙げていた。買収先の最有力候補として、なぜNXPの名が再浮上してきたのが。その事情に迫る。

Xデーは5月21日の米韓首脳会談か、韓国メディア

 サムスン電子がNXPを買収先の最有力候補と考えているだろう理由はいくつも浮かぶ。同社は2030年にメモリーだけでなくシステム半導体でも世界1位となる目標を掲げている。企業買収という大規模な投資をするならば、世界的に半導体不足に見舞われている車載半導体分野が適している。買収先としては、サムスン電子の主力工場がある米国内の車載半導体企業を優先するのが都合よい。NXPはサムスン電子の主力工場がある米国テキサス州オースティンに半導体工場を持つ。NXPが買収先として最有力に浮上するのは、こうした理由からだ。

サムスン電子の韓国・平沢(ピョンテク)市にある半導体工場
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サムスン電子の韓国・平沢(ピョンテク)市にある半導体工場
(出所:韓国Samsung Electronics)

 韓国メディアは、サムスンが買収を発表するXデーとして、21年5月21日開催予定の米韓首脳会談の前後と予想する。サムスン電子がこのタイミングで、テキサス州オースティンの半導体工場において、170億米ドル(約1兆8000億円)規模の新規投資計画を発表し、車載半導体関連でも企業買収計画を発表するのではないかとする報道も出ている。

 これに先立つ21年4月12日、米国のバイデン大統領は、世界的に不足する半導体の問題について世界の大手企業の幹部と協議している。そこにはサムスン電子の幹部も出席した。この協議について韓国メディアは、米中半導体覇権争いの中で、米国中心の半導体サプライチェーン再編のために米国内の生産施設にもっと投資してほしいというメッセージだと分析している。

 この4月の協議の直後にサムスン電子が何らかの形で米国の意向に沿う投資計画を発表するとみられていた。しかし発表はなかった。贈賄罪などで再収監された、サムスングループの経営トップでサムスン電子の副会長である李在鎔(イ・ジェヨン)氏の赦免につながるような世論を作るためにも、米韓首脳会談のタイミングのほうが都合よいのかもしれない。

 サムスン電子は米韓首脳会談前の21年5月13日になって突然、韓国メディアの予想を上回る規模の投資計画を発表した。韓国の文在寅大統領も出席した「K(Korea)-半導体ベルト戦略報告大会」で、 19年4月にまとめた「システム半導体ビジョン2030」達成のため従来計画に38兆ウォン(約3兆7000億円)を上乗せした171兆ウォン(約16兆5000億円)を投資すると発表した。追加した投資金はファウンドリーの最先端工程開発と生産ライン建設に使う。

 現在基礎工事中の韓国・平沢(ピョンテク)市の主力半導体工場第3ラインについて、稼働時期を23年から22年下半期に前倒しする。第3ラインの投資だけで50兆ウォン(約4兆8000億円)にのぼる見込みである。ただこの日も企業買収計画に関する発表はなく、米韓首脳会談に向けて、追加の発表があるのかどうかについて注目が続いている。