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 韓国政府は2021年7月8日、30年に次世代2次電池の分野で世界トップを目指す「K-バッテリー発展戦略」を発表した。「K-バッテリー、世界をチャージする」というキャッチフレーズのもと、韓国をグローバル企業が協力できる次世代電池の研究開発と製造の先導基地とする。K-バッテリー発展戦略に合わせて韓国電池メーカー3社と素材・部品企業は30年までに合計40兆ウォン(約3.8兆円)を投資する計画を明らかにした。

 「半導体が頭脳だとするとバッテリーは心臓。電動化や無線化などといった産業の未来トレンドをリードする核心産業である」「バッテリーを第2の半導体へ確実に成長させ韓国の未来をつくる」「今後10年の投資が世界バッテリー市場での韓国を決める。圧倒的1位になるため官民の力量を全て注ぎ込む」――。韓国政府はK-バッテリー発展戦略についてこのように意気込んだ。

韓国SKイノベーションはハンガリーの電池工場を増設する
韓国SKイノベーションはハンガリーの電池工場を増設する
(出所:SK Innovation)
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 韓国政府による経済政策としては21年5月に公表した「K-半導体戦略」が記憶に新しい。現在の韓国経済の輸出を支える半導体に加え、電池分野は今後、飛躍的な市場拡大が予想される。韓国LG Energy Solution(LGエナジーソリューション)と韓国SK innovation(SKイノベーション)、韓国Samsung SDI(サムスンSDI)という韓国電池メーカー3社は現在、車載向け電池市場で約4割の世界シェアを占めるなど、既に世界で大きな存在だ。しかし電気自動車(EV)メーカーのバッテリー製造内製化の動きや、主要国のバッテリー自国内生産強化などが続き、これまで以上に厳しい競争が予想される。韓国政府は、バッテリー強国の立場をさらに万全なものにするため、今回の国家戦略をまとめたようだ。

 K-バッテリー発展戦略では、2次電池の革新技術を国家戦略技術に指定し、研究開発費用の最大50%、施設の設備投資の最大20%を税額控除とする。次世代2次電池については25年にリチウム-硫黄(Li-S)電池、27年に全固体電池の実用化を進める。廃バッテリーの回収から再利用までの全過程にかかわる産業を育成する。

LGはバッテリー生産ライン増設などに約1.4兆円投資

 韓国電池メーカー3社も、K-バッテリー発展戦略に合わせて積極的な投資計画を明らかにしている。

 LGエナジーソリューションと親会社のLG Chem(LG化学)は、生産技術や生産ライン増設、先端素材技術開発、両極材の生産能力拡大に30年までに15.1兆ウォン(約1.4兆円)を韓国内に投資する計画を発表した。電池の主要材料である両極材については、年産6万t規模の工場を21年12月に韓国・九尾市につくる。これにより同社の両極材生産能力は20年の4万tから26年には26万tに増える。同じく主要材料の分離膜の強化についてはスピードを重視し、M&A(合併・買収)や合弁会社を検討しているという。両極材や陰極バインダー、防熱接着剤、カーボンナノチューブ(CNT)といった分野は研究開発費を先行投資し、技術の差別化を図る。

 人材育成にも力を注ぐ。具体的には、「LG IBT(Institute of Battery Tech)」と呼ぶ次世代電池専門人材を育てる機関をつくる。この他、バッテリー素材ソリューションのポートフォリオ拡大と事業競争力強化のため多様な方策を検討していると明かした。LG化学は創業以来最大のイノベーションを巻き起こすとし、素材部門において数百人単位の公開採用を行った。資金確保のためLGエナジーソリューションの新規株式公開(IPO)も予定している。

 LGエナジーソリューションの21年1~3月期の売上高は4兆2540億ウォン(約4040億円)、営業利益は3410億ウォン(約324億円)といずれも四半期で最高を記録した。EV向けバッテリー出荷の拡大と原価節減で収益が回復した。

 ただ21年4~6月期はリコールによって赤字が予想される。同社は17年4月~18年9月まで中国で生産したエネルギー貯蔵装置(ESS)向けバッテリーに潜在的な危険要素が見つかったとして21年5月にリコールを始めた。リコール費用は4000億ウォン(約380億円)と想定される。もっとも21年7月以降は業績が回復しそうだ。半導体不足で減産していたEVの生産再開が、業績回復を後押しすると予想される。