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 米政府が世界の半導体大手に求めている「機密事項」の開示要求が、波紋を広げている。営業機密ともいえる情報開示の要求に対し、世界各国の半導体企業が戸惑いを隠せないでいるからだ。米政府が情報提供期限として定めた2021年11月8日(米国時間)が迫る中、当初、情報開示を断固拒否する姿勢を見せていた半導体受託生産最大手である台湾TSMC(台湾積体電路製造)が、米政府の要請に応じる準備をしているという報道も出てきた。沈黙を貫いたままの韓国Samsung Electronics(サムスン電子)の判断に注目が集まる。

サムスン電子の半導体の例
サムスン電子の半導体の例
米政府の異例の「機密事項」要求に、沈黙を守るサムスン電子の対応に注目が集まっている。(出所:Samsung Electronics)
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異例の要求に当初TSMCが反発も、歩み寄りの報道も

 米商務省は21年9月24日、米Intel(インテル)やTSMC、サムスン電子、韓国SK Hynix(SKハイニックス)など世界の半導体メーカーや、半導体の大口購買者である完成車メーカーなどを対象に、「半導体供給網危機に関する公開意見要求(Notice of Request for Public Comments on Risks in the Semiconductor Supply Chain)」を告示した。長引く半導体不足を解消し、半導体のサプライチェーン(供給網)全体の透明性を図るために、大きく13項目の情報を45日以内に自発的に開示するように求めた。具体的には、半導体の生産能力や、発注から実際に半導体を使えるようになるまでのリードタイム、在庫、主要生産製品、製品別の月当たりの売り上げ、製品別の主な顧客、顧客別の売り上げ、今後6カ月間の増設計画などである。

 これらは企業にとっては、営業機密といえる重要な情報ばかりだ。簡単に開示できる項目ではない。米政府は自発的な情報開示を求めているとはいえ、協力しない場合は、米国防生産法(DPA)に基づいて半ば強制的な情報提供もちらつかせる。世界の主な半導体企業は、米政府の異例ともいえる要求にどのように応えるのか。さまざまな情報が飛び交っている。

 TSMCは21年10月初頭の段階で、「顧客に関する情報は絶対漏らさない」「米政府の要求が半導体供給ネットワーク問題を解決するためのものなら、我々ができる方法を講じる」など、要求は度が過ぎると批判的な態度を見せていた。だが複数の韓国メディアの報道によると、TSMCはここに来て米政府の要求に歩み寄る姿勢を見せているという。主要な韓国メディアは21年10月25日、台湾内の報道を引用し、TSMCが米政府の要求に応じる準備を進めていると報じた。

 他の半導体大手も、米政府の要求に協力する方向という情報が飛び交っている。ロイター通信は21年10月22日、米商務省報道官の発言として、インテルや米GM(General Motors)、SKハイニックスなど複数の企業が、米政府の求める情報開示要求に対して前向きな姿勢を示していると報じた。

 SKハイニックスの態度も見えてきた中、韓国内では残る半導体大手のサムスン電子の対応に注目が集まっている。