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 半導体不足の実態把握に向けて、米商務省が世界の半導体メーカーに対して2021年11月8日(米国時間)を期日として自発的に情報提供を求めていた件で、韓国Samsung Electronics(サムスン電子)や韓国SK Hynix(SKハイニックス)が資料を提出したことが分かった。顧客との秘密保持契約を守れる範囲内で資料を提出したようだ。一足先に提出した台湾TSMC(台湾積体電路製造)も同じく顧客の詳細情報は除いたようだ。米国がこの情報をどのように活用するのかが次のポイントになる。

波紋を呼んでいた米政府の機密事項の要求に韓国サムスン電子も情報を提出したことが分かった
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波紋を呼んでいた米政府の機密事項の要求に韓国サムスン電子も情報を提出したことが分かった
(出所:Samsung Electronics)

 米商務省は21年9月、世界の半導体メーカーや、半導体の大口購買者である完成車メーカーなどを対象に、生産能力や生産工程、リードタイム、在庫、製品別の主な顧客、顧客別の売り上げなどの自発的な情報開示を求めた。長引く半導体不足を解消し、サプライチェーン(供給網)の透明性を図るためだ。ただし営業機密といえる情報まで開示を求めたため、世界に波紋が広がっていた。締め切り前日に当たる11月7日には67社の提出にとどまっていたが、締め切り日の11月8日にはサムスン電子などを含めて189社が情報を提出した。多くの企業がどこまで米政府に情報を提供するべきなのか、最後の最後まで悩んだようだ。

 サムスン電子より先に情報を提出したTSMCなどが「顧客別の売上情報は秘密保持契約違反になるため提出できない。その代わりに自動車やパソコンなど産業別半導体売り上げを提出する」と米商務省に交渉したところ、これを受け入れたという報道もあった。その流れでサムスン電子とSKハイニックスも詳細な顧客情報を提供しなくて済んだようだ。

 複数の韓国メディアによると、サムスン電子は顧客情報のみならず顧客との価格交渉に影響を与えるチップの在庫量も記載せず、提出した情報は全て一般公開しないよう求めたという。米商務省は11月9日(米国時間)メーカーが公開を許可し、同省も問題ないと判断した資料の一部をWebサイトに掲載した(86 FR 53031 Notice for Risks in the Semiconductor Supply Chain_published 9-24-21_comments due 11-8-21、https://www.regulations.gov/document/BIS-2021-0036-0001/comment)。SKハイニックスやTSMCの回答文書の一部もここで公開されている。

 SKハイニックスは公開資料を通じて、「メモリーは他の半導体に比べ短期的需給変化に対応しやすい」「現在の半導体チップ不足の原因はメモリー半導体ではない」「メモリー半導体の需給は数年間安定的で、(メモリー半導体が主力の)SKハイニックスはどの製品も生産遅延なく、顧客社の電子システム生産に支障を来すような問題を起こしていない」「メモリー半導体の安定的供給のため米国顧客と緊密に協業している」「次世代技術開発と装備・工場建設投資で十分な生産能力を持続的に維持する」「(メモリーは供給問題がないため)過剰生産能力がない状況で超過生産を勧告するのは存在しない問題の解決策を強要すること」などと強調した。米政府が問題視している半導体不足は自動車に入るシステム半導体がメインであり、自社とは関連がないという点を明確にしたかったようだ。

 韓国からはサムスン電子とSKハイニックスのほかに、半導体シリコンウエハーを生産するSK Siltron(SKシルトロン)、韓国の現代自動車(Hundai Motor)の米国法人であるKia Georgiaも情報を提供した。