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 世界的な半導体不足が続き、2021年は半導体チップ生産を請け負うファウンドリー(受託生産)市場がこれまでにない好況となった。メモリー半導体で世界シェア1位、ファウンドリー市場で世界シェア2位の韓国Samsung Electronics(サムスン電子)も絶好調だ。同社の21年7~9月期の業績は、売上高が73兆9800億ウォン(約7兆1000億円)と四半期ベースで過去最高を更新した。営業利益は15兆8000億ウォン(約1兆5000億円)であり、実にその約6割を半導体事業が稼ぎだした。

 米国の市場調査会社IC Insightsによると、21年の半導体企業の世界売上高ランキングにて、サムスン電子が米Intel(インテル)を抑えて世界1位になる見通しという。サムスン電子が実際トップに立てば、18年以来、3年ぶりの首位奪還になる。

世界のファウンドリー市場を圧倒する台湾TSMC(台湾積体電路製造)。サムスン電子はTSMCの牙城に挑んでいる
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世界のファウンドリー市場を圧倒する台湾TSMC(台湾積体電路製造)。サムスン電子はTSMCの牙城に挑んでいる
(出所:TSMC)

 サムスン電子は、半導体ファウンドリー市場で世界首位の台湾TSMC(台湾積体電路製造)を追撃する姿勢を見せる。

 同社は21年11月末、長らく懸案となっていた米国への投資を正式に決めた。約170億ドルを投資し、米テキサス州テイラー市に同州オースティン工場に次ぐ第2のファウンドリーを建設する。テイラー市の工場は、2024年下半期の稼働目標とする。

 韓国の平沢(ピョンテク)や華城(ファソン)、器興(キフン)にあるサムスン電子の半導体工場でも生産ラインや事務棟の増設を進めている。同社は生産能力を今の2倍以上に高め、幅広い企業からの受託生産に応えたい考えだ。

グーグル、エヌビディアなどに次ぎ、STマイクロからも受注

 サムスン電子から見ると、TSMCの背中はまだ遠い。台湾の市場調査会社である集邦科技(TrendForce)によると、21年7~9月期の半導体ファウンドリー市場シェアはTSMCが53.1%(前期52.9%)で圧倒し、サムスン電子は2位の17.1%(前期17.3%)だった。TSMCも24年までに1280億ドルという巨費を投じて、米アリゾナ州や日本の熊本市に生産拠点を確保する考えを示す。

 サムスン電子は、徐々にではあるがTSMCの牙城を切り崩しつつある。

 韓国メディアによると、サムスン電子は、米Google(グーグル)や米NVIDIA(エヌビディア)、米Qualcomm(クアルコム)、米IBMに次いで、米STMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス)から、MCU(Micro Controller Unit)の生産を受注したという。

 STのMCUは、iPhoneが採用する部品の一つだ。16nm世代プロセスの工程で生産する。既に2年先までの生産計画が埋まっているという。

 小型で高性能なMCUは、スマホやクルマなどで需要が広がっている。先端工程ではないものの、顧客の細かい要求に沿って生産する必要がある。世界のMCUのほとんどをTSMCと台湾聯華電子(UMC)という台湾勢が生産している。サムスン電子がファウンドリー市場でTSMCとの競争に勝つためには、MCUは非常に重要な品目になる。

 サムスン電子は、米Tesla(テスラ)からの受託生産も決まっている。7nm世代プロセスの工程で生産した自動運転用のチップを、22年1月からテスラに納入する。このチップは、テスラのEV(電気自動車)トラック「Cybertruck」に搭載されるといううわさだ。テスラは、ファウンドリーとの長期的な協力関係を築くために、TSMCではなくサムスン電子を委託先として選択したといわれている。