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 韓国Samsung Electronics(サムスン電子)が巨額投資する次世代ディスプレー「QD-OLED」が、2022年1月初めに米ラスベガスで開催されたテクノロジー見本市「CES 2022」でデビューした。現在、大型で高価格帯を主とするテレビ向けのOLED(有機EL)パネルは、韓国LG Display(LGディスプレー)の独壇場であり、サムスンは新たなQD-OLEDパネルでLGディスプレーの牙城に挑む。一方で韓国内では、サムスンがLGディスプレーのOLEDパネルも採用するのでは、という観測が浮上している。背景には低価格の液晶パネル市場で中国勢が台頭し、韓国2社が有機ELを採用したプレミアムテレビ市場に活路を見いだしているという事情も見える。

QD-OLEDパネルの動作原理
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QD-OLEDパネルの動作原理
(出所:Samsung Display)

CES 2022で正式デビュー、次世代ディスプレー「QD-OLED」

 サムスン電子副会長のHan Jong-hee氏はCES 2022の記者説明会で、QD-OLEDパネルを採用したテレビを発売することを正式に明らかにした。22年上半期中の発売を見込み、年間100万台を生産するという。説明会では、55型と66型のテレビ向けQD-OLEDパネルと34型のモニター向けQD-OLEDパネルを展示した。QD-OLEDテレビ自体は展示しなかったものの、同社が発売を計画する65型のQD-OLEDテレビは、CES 2022の「Best of Innovation Award」を受賞した。

 QD-OLEDは、サムスンが19年から25年までに生産施設構築と研究開発に13.1兆ウォン(約1.2兆円)もの巨額を投資する次世代ディスプレーだ。QD-OLED のQDは、電気・光学的性質を持つナノメートルの大きさの半導体粒子のこと。QD-OLEDでは、光の三原色の中で青色素子を発光源とし、ナノスケールの半導体粒子をカラーフィルターの代わりに使って、RGBで残る緑や赤を生成する。同社はQD-OLEDテレビを「現存する最高画質のテレビ」になるとする。

 実際、サムスンのQD-OLEDパネルは22年1月10日に、スイスの検査・認証機関であるSGSにより、色彩再現力が高く視野角による画質低下が少ないという認証を獲得している。

 実はサムスンにとってテレビ向けの大型OLEDパネルは再参入に当たる。サムスンは12年に、55型の大型OLEDテレビを公開した。しかしその後、製造工程に課題が判明し、大型のOLEDパネルから撤退。より低価格な液晶(LCD)をベースにした「QLED」テレビを主力としてきた。今回のQD-OLEDテレビの発売は、サムスンにとって満を持しての再出発となる。

液晶パネルは中国勢が席巻、韓国勢はプレミアムテレビに活路

 現在のテレビ市場は、価格優位性があるLCDを採用したテレビがまだ市場の主役だ。低価格なLCDパネル生産で市場を席巻しつつあるのが京東方科技集団(BOE)や華星光電(CSOT)といった中国勢だ。

 中国勢の価格攻勢によってLCDパネル生産の収益性が悪化しはじめた韓国勢は、同事業を縮小していく考えを示す。サムスンがOLEDテレビ事業を再開する背景には、収益が悪化するLCDパネルの生産ラインをQD-OLEDパネルに転換し、1台1500ドル以上といわれる大型のプレミアムテレビ市場に活路を見いださざるをえないという事情がありそうだ。

 収益性が悪化するLCDパネルに対し、OLEDパネル市場は今後、伸びが期待できる。実際に英調査会社のOmdiaは、22年のOLEDテレビの出荷量を当初予測の650万台から800万台へと上方修正した。サムスンがOLEDテレビ市場に再参入することで、さらに市場拡大が期待できるとしている。

 現在、大型のOLEDパネル市場を席巻するLGディスプレーとサムスンが技術競争することによっても、OLEDテレビ市場を活気づけるとみられる。サムスンのQL-OLEDが青色素子を発光源にするのに対し、LGディスプレーのOLEDパネルは白色素子を発光源とする。

 サムスンの再参入を受けて立つLGディスプレーも21年末、輝度を過去製品から最大30%向上し、機械学習ベースのアルゴリズムで色彩表現力を高めた次世代ディスプレー「OLED EX」を発表した。画質だけでなくデザインも改良し、65型パネルのベゼルを6mm台から4mm台に縮めた。