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 韓国次期大統領に、保守系最大野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏が就任することが決まった。尹氏の大統領就任を前に、韓国産業界では、現在の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が積極的に進めてきた半導体やバッテリー産業の支援策が引き継がれるのかどうかが注目されている。尹氏の選挙時の公約や当選後の動きからは、現政権以上に半導体やバッテリー産業を後押しする姿勢がうかがえる。さらに現政権で冷え切った日韓関係についても改善が期待されている。

尹韓国次期大統領の就任に伴って、日韓関係の改善が期待されている
尹韓国次期大統領の就任に伴って、日韓関係の改善が期待されている
(出所:123RF)
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 「自由民主主義と市場経済を正しく立て直し、危機を克服して統合と繁栄の時代を切り開く」「(米韓同盟は)自由民主主義と市場経済、人権の価値を共有しながら包括的戦略同盟を強化する。相互尊重の中韓関係を発展させ、未来志向的な日韓関係をつくる」――。次期大統領に当選確定後の演説で、尹氏はこのように語った。

 次期大統領に選ばれた直後、尹氏は、韓国の経団連にあたる韓国全国経済人連合のメンバーである財閥グループの会長らと会合を重ねた。会合を受けて尹氏は、「企業がより自由な判断で投資し成長できるような活動の阻害要因を除外していくのが政府の役割だと考えている」「政府はインフラをつくり、企業が雇用を生み投資する。企業が成長すれば国も成長する」という趣旨のコメントをした。

 尹氏は「企業を経営しやすい環境をつくる」がモットーだ。同氏は、「(企業側から不満が漏れていた)現在の勤労時間や最低賃金制度などを見直す」と繰り返し発言している。「週52時間勤労制・最低賃金値上げ」など、労働者側寄りだった現在の文政権とは違う点をアピールしている。

中小企業優遇から転換、大企業の声を政策に反映する尹氏

 もっとも尹氏は、文政権が推し進めてきた半導体やバッテリーという韓国を代表する産業を後押しする政策については、一層強化するとみられる。

 尹氏は韓国の大統領選において、「半導体超強大国を目指し、50兆ウォン規模の基金をつくる」「半導体分野で10万人の人材育成」といった点を公約に掲げた。韓国半導体産業が強いメモリー半導体の競争力を維持しながら、システム半導体やAI(人工知能)チップ、ファウンドリーなど非メモリー半導体分野においても、他国を追い抜くために投資を拡大することを強調する。

 尹氏はこの他、研究開発・施設投資の税額控除拡大や、全国に半導体拠点を置く半導体未来都市建設、半導体工場の電力や工業用水などのインフラ支援、経済安全保障のため韓国産業通商資源部や複数の省庁が担当している半導体部品・原材料供給網の点検を大統領官邸レベルに引き上げる点も公約に掲げた。

 現大統領である文氏は、半導体やバッテリー産業を後押しする一方、中小企業育成を重視したため、韓国Samsung Electronics(サムスン電子)や韓国SK Hynix(SKハイニックス)といった財閥系大企業をおろそかにしているという見方があった。

 例えばSKハイニックスの京畿道龍仁市における半導体クラスター計画だ。同計画は2019年発表後、環境規制や土地補償問題などで地域の住民との話し合いが難航している。韓国半導体業界は、半導体投資の絶好の機会を逃してはならないとして、こうした問題に政府が介入し、規制緩和によって解決することを期待していた。尹氏はこのような大企業の声も政策に反映しようとしており、韓国半導体業界からの期待が高まっている。

 韓国半導体業界は大統領選後、尹氏に対し、ソウル市内にある大学の半導体学科入学定員を増やせるよう規制緩和してほしいと要望した。韓国半導体業界はこれまでも、半導体学科の年間卒業生を現在の650人前後から1500人へと増員を求めていた。しかし現在の文政権は首都圏一極集中を避けるために、ソウル市内の大学の学生と教員の定員を制限していたが、尹氏は現政権の方針を転換する。優秀な人材を確保するため半導体をはじめとした先端産業に関連する学科の定員は、大学定員とは別枠で管理する方針を明らかにした。

 ソウル市内の大学は、企業と連携した半導体学科の他、バッテリー学科やスマートファクトリー学科などを新設している。このような企業と連携した学科は、企業が必要とする実務的な人材を育てることを目的とする。企業が学生の授業料や生活費を負担する代わりに、学生は卒業と同時に支援した企業に就職する。