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 フラッシュメモリー関連で世界最大級のイベント「2022 Flash Memory Summit(FMS)」が米国カリフォルニア州サンタクララで2022年8月2~4日(現地時間)に開催された。ここで主役になったのは、韓国SK Hynix(SKハイニックス)と韓国Samsung Electronics(サムスン電子)といった韓国勢だ。SKハイニックスは世界初という238層のNAND型フラッシュメモリーを発表した。サムスン電子も、AI(人工知能)や機械学習に最適化した「Memory-Semantic SSD(メモリーセマンティックSSD)」と呼ぶ新たなSSDを公開した。世界的な景気後退でメモリー需要が減少する中、両社は技術力によってイノベーションを続ける意欲をみせた。

SKハイニックスがFMSに合わせて発表した238層NAND型フラッシュメモリー
SKハイニックスがFMSに合わせて発表した238層NAND型フラッシュメモリー
(出所:SK Hynix)
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 NAND型フラッシュメモリーは、スマートフォン(スマホ)やパソコンのストレージであるSSDに使われる技術だ。近年ではストレージ容量の単位であるセルを垂直に積み上げる積層技術が重要になってきた。積層すればするほどストレージ容量を大きくできる。

 SKハイニックスが公表した238層NAND型フラッシュメモリーは、1つのセルに3ビットのデータを保存できるTLC(Triple Level Cell)をメモリーセルに採用するタイプだ。

 実はFMSが開催される1週間前、米Micron Technology(マイクロンテクノロジー)が世界初という232層NAND型フラッシュメモリーの量産を開始したと発表した。SKハイニックスはわずか1週間で業界最高の積層数を塗り替えた形だ。同社はこの238層NAND型フラッシュメモリーを2023年第1四半期に量産を開始する計画という。

 SKハイニックスによると今回の発表は、業界最高の積層数に加えて、メモリーサイズが業界最小水準という特徴にも意義があるとする。同社は積層数を増やすために、単にセルを高く積み上げるのではなく、周辺回路をセルの下に置き無駄なく空間の集積度を高める「4D構造」と呼ぶ実装方式を採用している。

 238層NAND型フラッシュメモリーは、同社の前世代に当たる176層NAND型フラッシュメモリーと比べて、集積度を34%向上したという。メモリーの伝送速度は50%速くなり、データを読み込むときに使う電力消費は21%減少した。より環境にやさしくなったといえる。同社は238層NAND型フラッシュメモリーをパソコンのSSD向けに供給し、その後、スマホやサーバー向けに供給する計画だ。

 FMSの基調講演に登壇したSKハイニックス副社長のチェ・ジョンダル氏は「原価や性能、品質の側面からグローバルトップクラスの競争力を確保した」「技術の限界を突破するため絶えずイノベーションを行う」と強調した。

 同氏の基調講演にはSKハイニックスが米Intel(インテル)から買収したNAND型フラッシュメモリー事業を進める米Solidigm(ソリダイム)の幹部も同席した。1つのセルに5ビットのデータを保存できる「PLC(Penta Level Cell)」を採用したSSDの動作デモを世界で初めて公開した。ストレージ容量をより拡大できるPLCの登場によって、現在データセンターの85%を占めているHDDをSSDに切り替えられるとする。

 SKハイニックスはFMSのセミナーにも登壇し、新たなインターフェースであるCXL(Compute Express Link)に対応したDDR5 DRAMベースの96Gバイトのメモリーサンプルの開発についても発表した。

 CXLは、PCIe(Peripheral Component Interconnect Express)をベースにした標準インターフェースとして、CPUやGPUなどのアクセラレーター、メモリーなどをより効率的に接続することを狙ったものだ。これまでは、CPUを中心に、メモリーやストレージ向けに個別のインターフェースが存在し、デバイス間の通信が非効率になっていた。AIやビッグデータの一般化で、効率的なコンピューティング環境の需要が増している。CXLは、データ処理にかかわる複数のインターフェースを共通化し、メモリーを各デバイスで共有させるという次世代アーキテクチャーを目指しているようだ。

 ちなみに新たなメモリーアーキテクチャーを巡っては、これまで「CXL Consortium」と「Gen-Z Consortium」という2つの団体が主導権争いをしていた。2021年末にこの2つの団体が統合し、CXLが事実上の標準になった。