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 楽天が2020年4月8日、携帯電話事業への本格参入を果たす。300万人を対象に料金を1年間無料にする「衝撃的なプラン」(三木谷浩史会長兼社長)で殴り込みをかけるが、不安は尽きない。世界初とうたう完全仮想化ネットワークの安定性、競合のKDDI(au)に支払う高額なローミング利用料、EC(電子商取引)の送料込み表示を巡る公正取引委員会との対立――。逆風が吹く楽天に勝算はあるのか。

新料金を発表する楽天の三木谷浩史会長兼社長
新料金を発表する楽天の三木谷浩史会長兼社長
(出所:楽天)
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 「auとのローミング(相互乗り入れ)は2年もたてばやめられる」――。

 基地局整備の遅れを理由に総務省から2019年に3度も行政指導を受けた楽天モバイル。だが最近は基地局整備に手応えを感じ、楽天幹部からはこうした自信の発言が漏れ聞こえてくる。

 楽天は2018年11月、KDDIと業務提携した。楽天がスマホ決済や物流の基盤などをKDDIに提供する代わりに、KDDIは自社の携帯電話網に楽天が乗り入れる「ローミング」を認めた。ローミングの提供期間は2019年10月から2026年3月末まで。楽天はKDDIとの提携により、自前で通信網を整備する時間的猶予を得た。

 KDDIとのローミングは楽天が全国で携帯電話サービスを展開するための「命綱」である一方、安価な料金を実現するうえでの「足かせ」でもあった。楽天の顧客がローミングでKDDIの携帯電話網を利用すると、楽天はKDDIに利用料を支払う必要がある。安価で大容量のプランを打ち出すほど、楽天はローミング利用料がかさみ、収益を圧迫される構図だ。

 KDDIに支払う高額のローミング利用料がネックとなり、楽天は思い切った料金プランを打ち出せないとの見方が大勢だった。しかし蓋を開けてみると、KDDI回線エリアのデータ通信は月2Gバイトまで(超過時の通信速度は最大128kビット/秒)の制約があるものの、300万人は料金が1年間無料、2年目以降も月2980円という水準まで引き下げた。三木谷会長兼社長は「真っ向勝負で皆さんのために頑張りたい」と力を込めた。