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 新型コロナウイルスへの感染が拡大した中国だが、徐々に落ち着きを見せ、2020年3月4日時点で患者数は減少傾向にある。

 しかし今回の感染拡大により、現在も企業活動や市民生活に大きな制約が出ている。一方で、デジタル技術の活用によりそうした制約を緩和、回避しようという動きが盛んだ。感染拡大を防ぐために、既存のデジタル技術が改めて注目を高める例も出ている。

 筆者は中国でのビジネス視察ツアーを実施する会社を営んでおり、通常1カ月の半分ほどは中国で過ごしている(現在は中国での視察ツアーは中止している)。現地でデジタル技術が市民生活に浸透しており、様々なテクノロジーが活用されている様子をこれまでも数多く目にしてきた。

 本特集では、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための技術、感染拡大を受けて改めて注目が高まりそうな技術など、中国における代表的なデジタル技術の活用事例を、現地で報道されている情報も合わせて紹介していく。

 今回紹介するのは主に、「人と人との接触を最小限に抑える」テクノロジーだ。ウイルスの封じ込めには政府・民間ともに多くの対策が実施されたが、その中で、ロボットやドローンなど様々なテクノロジーが活用されている。

ドローンが市民に注意を呼びかける

「おばあちゃん、見てないで!これは私たちの村のドローンです」
「あなたはマスクをしてないですよね。むやみに外に出ないで」
「帰ったら手を洗ってね、いいですか?」

 中国で新型肺炎への感染が広がる中、警察官がドローンに搭載したスピーカーを使用して女性に家の中に入るように促す動画が、中国のソーシャルメディアで拡散された。街の上空を飛ぶドローンに搭載されたカメラの映像を通じて人が集まっている場所を見つけ、注意する。広州公安は中国のSNS、微博(weibo)の公式アカウントでその様子を公開した。

 公安の業務にドローンを活用することで、注意喚起の効率化を図るほか、人との接触を避けることによって公安の人員の感染を避ける狙いがあるようだ。

上空のドローンから市民に注意を呼びかける
上空のドローンから市民に注意を呼びかける
出所:広州公安のweibo公式アカウント
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 ドローンが使われているのは、前述した広州の地区に限ったことではない。SNSで拡散されている情報の中にはほかにも、歩行者にマスクを着用するように警告したり、人が集まるのを防ぐために屋外に置かれたマージャン卓をドローンが壊したりしているものまである。

 また地区によっては、検温ができるドローンで住民の体温を計っているところもある。街中を歩く市民の体温を上空から測定。高熱がある人は、自宅待機や病院での受診を指示されるというわけだ。

 ディストピア(暗黒郷)的な監視社会のようにも見えるが、このような感染拡大の危険がある状況下では効果的な対策とも言えるだろう。

 ちなみに中国の人々の反応はというと、投稿された動画には「おばあちゃんも笑ってるね」「笑っちゃうね、おばあちゃんかわいい」など、この様子を楽しむコメントが目立つ。

 ドローン世界最大手のDJIを擁する中国でも、日常的にドローンを見る機会は一般人にとってはほぼない。ドローンでの取り締まり自体が物珍しく、また動画に写っている女性の反応も相まって、広く注目された。現地メディアの人民網が字幕付きでSNSアカウントで発信した動画は、2020年2月27日時点で240万回再生されている。

 他にも、バスケットコートで遊ぶ若者たちに、かつて東京・渋谷で話題となった「DJポリス」さながら、公安がうまく注意して家に帰す様子を収めた動画なども人気だ。

 中国に住む筆者の友人の間でも、このような動画は「おもしろ動画」のような位置付けで拡散され、話題となっている。「監視されていて怖い」「自分がこれをされたらどう思うか」「どうあるべきか」という話よりも、感染拡大下で家から出られない人々にとっての「楽しい暇つぶしコンテンツ」となっているようだ。