2020年3月1日、改正建築士法がついに施行された。これまで建築士試験の受験に必要だった実務経験が免許登録要件に変わり、大学を卒業すればすぐに一級建築士試験を受験できるようになった。免許登録の際に必要となる実務経験の対象は、建築に関わる多様な業務を認めるよう抜本的に見直した。受験申し込みの受付は例年よりも早い20年4月1日から。果たして、受験者数は増えるのか。
改正の狙いは若い受験者の数を増やし、継続的かつ安定的に建築士人材を確保することだ。一級建築士試験の受験者数はこの10年間で約4割減少。建築士事務所に所属する一級建築士約14万人のうち、60代以上が全体の約4割、30代以下は1割程度という極めていびつな年齢構成になってしまっている。
こうした事態に危機感を覚えた日本建築士会連合会、日本建築士事務所協会連合会、日本建築家協会の建築設計3会は、18年6月に自民党建築設計議員連盟に「建築士資格制度の改善に関する共同提案」を提出。建築士法改正の必要性を訴えた。これを受けて、議員立法による改正建築士法が同年12月に成立した。提案から半年でのスピード改正だった。
05年に発覚した構造計算書偽造事件を受けた06年改正以降、建築士の資格と業務に関する規制は強化の一途をたどってきた。一級建築士試験のハードルを上げ、契約前の重要事項説明を義務化するなどして、消費者からの信頼を回復しようとした。こうした流れから一転、18年改正では緩和へとかじを切り直した。
例えば、06年の改正で実務経験の対象を設計・工事監理などに絞り込んだことが、受験者数の激減につながったなどとして、建築物の検査や建築に関する研究など、06年に実務経験の対象から除外した業務の一部を復活させた。さらには建築士業務の実態に合わせて新たに追加した項目もある。