建築士事務所の開設者に義務付けている図書の保存。2020年3月1日施行の改正建築士法で対象が拡大した。木造戸建て住宅などの4号建築物や建築確認が不要な建築物についても「構造計算書など」を15年間、保存しなければならない。
国土交通省は建築士法施行規則を改正し、全ての建築物に図書の保存を義務付けた。対象となる図書は、配置図や各階平面図、2面以上の立面図、2面以上の断面図のほか、基礎伏図、各階床伏図、小屋伏図、構造詳細図、さらには構造計算書などや工事監理報告書まで多岐にわたる。保存期間は作成日から15年間。2020年3月1日以降に作成した図書が対象だ。
図書を保存しなかった場合、30万円以下の罰金に処される。図書保存の強化で、建築物の構造安全性が確保されていることを建築士が対外的に立証しやすくするとともに、設計業務などの委託者の保護を図る。
特に影響が大きいのが、木造戸建て住宅などの4号建築物。基礎伏図や構造詳細図などが保存対象に加わる。さらに、壁量計算や四分割法、N値計算に関する図書も保存の対象となった。
4号建築物にはこれまで、構造詳細図や計算書などの保存義務が無かったため、トラブルが生じた際などに構造安全性を証明するのが難しい場合があった。
このほか、建築士でなくても設計や工事監理ができる延べ100m2以下の2階建て木造建築物や建築確認が不要な建築物などには、今回初めて図書の保存を義務化した。
2号・3号建築物については、これまでも保存義務があった保有水平耐力計算などの構造計算書に加えて、仕様規定の適用除外に必要な構造計算に関する図書の保存が新たに義務化された。
例えば、基礎や柱など構造部材に関する仕様規定の適用除外や、燃えしろ設計などを実施した際に注意が必要だ。仮に壁量計算などをした場合には、そうした計算書も保存しなければならない。