豪雨が年々増加しており、建築設計者には防水や雨仕舞いへの配慮がこれまで以上に求められている。一方、建築の現場では、防水方法に変化が見られる。アスファルト防水ではなく、ウレタンによる塗膜防水を採用する事例が増えており、屋上のパラペットのアゴが不要になるなど、デザイン面にも変化が表れている。こうした過渡期にあって、建築設計者は、自分のデザインと、防水・水仕舞いをどうすれば両立できるのか。日経アーキテクチュアの連載「漏れないディテール」と連動して、第一線の建築設計者へのインタビュー全文をお届けする。

防水・水仕舞いの新鉄則
目次
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金属雨といは内側や切断面の性能も大切、後悔しない選び方を伝授
タニタハウジングウェアの谷田泰社長と開発部商品開発課・飯島清一課長に聞く
1時間当たり100mmといった豪雨が増加していること、中大規模木造に勾配屋根を架ける事例が増えていることなどを背景に、大型の金属雨といの需要が高まっている。種類やコストから、使用上の注意点まで、金属雨といの製造販売を手掛けるタニタハウジングウェアの谷田泰社長らに聞いた。
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超速硬化ウレタン複合防水とは?急拡大する防水工法のツボを押さえる
ともにダイフレックス営業推進グループ課長の石川貴紀氏と松村康弘氏に聞く
下地の亀裂に対する抵抗性の高さ、複雑な躯体形状への適用しやすさなどから、ここ数年、採用が増加している「超速硬化ウレタン複合防水」。ウレタン系塗膜防水の1つだ。この連載に登場してもらった設計者の多くが、アスファルト防水などと使い分けている。なぜ採用が増えているのか。超速硬化ウレタン複合防水にいち早く…
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“消すディテール”で内外一体の居場所づくり、竹中工務店・長谷川寛氏
竹中工務店その3、名古屋支店設計部設計グループ長の長谷川寛氏
名古屋市内の大型再開発「グローバルゲート」をはじめ、中部地方を中心に近年、大型建築を設計する機会が多い竹中工務店名古屋支店設計部の長谷川寛氏。内外の空間が一体となった人の居場所づくりを心掛けている。新型コロナウイルスの感染拡大防止といった面からも、こうしたパブリック空間をどうつくるのかは設計者にと…
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白い外装でも汚れなしで快適な光環境に、竹中工務店・花岡郁哉氏の設計テク
竹中工務店その2、東京本店設計部設計第2部門設計4(アドバンストデザイン)グループ長の花岡郁哉氏
アルミ材やプレキャストコンクリートを外装に用いた白くミニマルなデザイン。これが、竹中工務店東京本店設計部の花岡郁哉氏による設計の特徴だ。意匠優先のようにも見えるが、実は細部まで緻密に考えられたディテールがそれを支えている。ファサードの汚れなしで内部に快適な光環境をもたらす設計法とは。
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軒や庇で都市と建築のスケールをつなぐ、竹中工務店・米津正臣氏の設計術
竹中工務店その1、大阪本店設計部設計第3部門設計1グループ長の米津正臣氏
軒や庇(ひさし)といった、まさに雨仕舞いに直結する建築の部位を、周辺の都市のスケールとつなぐ要素として活用する竹中工務店大阪本店設計部の米津正臣氏。それぞれの建物で、境界部分に接点を見いだして設計に当たる。例えば、車のディーラーのショールームでは、道路と屋上が一体になったような建築を生み出した。ど…
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ウレタン複合防水で窓まわりを一変、納まりを極める日建設計・多喜茂氏
日建設計その3、設計部門シニアエキスパートデザイナーの多喜茂氏に聞く
2000年ごろ、発注者から建設費の大幅な削減を求められたのをきっかけに、押さえ金物の要らない防水方法を探し始めた日建設計の多喜茂氏。超速硬化ウレタン複合防水に出会い、緑化システムを配したテラス、超高層ビルの各階を取り巻くテラスなどで、独自のディテールを極めてきた。メンテナンス次第で長持ちし、不具合…
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壁面緑化は土の気化冷却効果を利用せよ、日建設計・羽鳥達也氏が説く環境建築
日建設計その2、設計部門ダイレクターアーキテクトの羽鳥達也氏に聞く
日建設計として山梨知彦氏らとともに日本建築学会賞(作品)を受賞した「NBF大崎ビル(旧ソニーシティ大崎)」以来、羽鳥達也氏は、環境に配慮した建築の設計に注力してきた。ワイヤを用いた壁面緑化では、緑化用の土が周辺を冷却するために重要になると説く。緑化の事例とその水仕舞いについて聞いた。
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日建設計・山梨知彦氏の設計作法、防水は安全に納まりは素っ気なく
日建設計その1、常務執行役員設計部門プリンシパルの山梨知彦氏に聞く
菊竹清訓氏設計の「スカイハウス」や、丹下健三氏設計の「香川県庁舎」から建築の原点を見いだしたという日建設計の山梨知彦氏。建物の内外にどう空間のつながりを生むかが設計の大テーマだ。その際、防水は安全にしつらえる一方、納まり自体はぶっきらぼうなほうがいいと言う。同氏の空間づくりは、こうした考えに基づい…
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日差しや風を取り込む半屋外空間はこうつくる、プランツの宮崎浩氏が伝授
プランツアソシエイツ代表の宮崎浩氏に聞く
独自のスチールサッシなど、端正なディテールで知られるプランツアソシエイツ代表の宮崎浩氏。雨掛かりを避けながら日差しや風を取り込む半屋外空間を設計する機会が多い。大型商業施設を庁舎などにコンバージョンするプロジェクトでは、内部空間を外部化し、2層吹き抜けの屋外テラスを生み出した。雨が降り込む際、床を…
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雨漏りと見まがう結露水対策に注力、環境派・小堀哲夫氏のテク
小堀哲夫建築設計事務所代表の小堀哲夫氏に聞く
太陽光や風などの自然エネルギーを活用した設計で知られ、日本建築学会賞(作品)やJIA日本建築大賞を受賞した小堀哲夫氏(小堀哲夫建築設計事務所代表)。ガラストップライトを用いる機会が多いことから、雨漏りとともに結露には気を配る。結露による水漏れを防ぐには、アルミ製支持材の断熱や結露受けの設置が重要だ…
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パズルのように平面と雨水の流れを解く、CAtの赤松佳珠子氏と大村真也氏
シーラカンスアンドアソシエイツ(CAt)の赤松佳珠子・大村真也両パートナーに聞く
学校建築をはじめ、低層で大きな平面の建築を設計することが多い。勾配屋根だとコストアップにつながることから、フラットスラブを採用。どのように雨水を集め地上に落とすか。平面と同時に雨水のルートを解いていく。見た目にはその苦労は分かりにくいが、雨水計画はパズルのように難解だ。
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意匠性と工費削減を両立するウレタン防水の先駆け、三菱地所設計の須部恭浩氏
三菱地所設計建築設計三部チーフアーキテクトの須部恭浩氏に聞く
大規模な建物でも、外壁をせり出したり、鋳物のスクリーンで覆ったりする設計で、外壁の汚れにも配慮しながら浮遊感を生み出す。屋上の防水にはウレタン塗膜防水を採用。独自の納まりで、パラペットの意匠をシャープにするとともに、工費の削減などをもたらす。
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屋上スラブの下にもう1枚の“屋根”、内藤廣流「雨漏りゼロ」の極意
内藤廣建築設計事務所代表で東京大学名誉教授の内藤廣氏に聞く
台風や豪雨が過ぎ去った後、過去に設計を手掛けた建物に連絡を入れて、被害の有無を確認するという建築家の内藤廣氏。挑戦的な形状の屋根でも、「これまでは雨漏りなどの問題はない」と言い切る。独立して最初に設計したプロジェクトの教訓を生かし、建物の用途や規模に応じて、三重、四重の防水で「雨漏りなし」を実践す…