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 学校建築をはじめ、低層で大きな平面の建築を設計することが多い。勾配屋根だとコストアップにつながることから、フラットスラブを採用。どのように雨水を集め地上に落とすか。平面と同時に雨水のルートを解いていく。見た目にはその苦労は分かりにくいが、雨水計画はパズルのように難解だ。

設計におけるプランのつくり方、屋根の水仕舞いや断面の考え方を教えてください。

赤松 我々の仕事の中では、学校が多数を占めます。学校はなるべく低層で接地性が高いほうがよいと考えており、平面がどうしても大きくなる。屋根も広くなり、自然採光しにくいところにハイサイドライトを設けています。必然的に屋根面が凸凹した断面になっていると思います。

 また、水勾配を普通につけようとすると、高さが必要になってしまい、コストアップにもつながります。そこで、屋根はなるべくフラットに納める方が合理的だと判断しています。そうした様々な要因が重なって、フラットスラブの屋根が多くなっています。フラットの屋根からどう水を落とすかが、まさに毎回の課題です。

ともにシーラカンスアンドアソシエイツ(CAt)のパートナーである赤松佳珠子氏と大村真也氏。赤松氏は法政大学の教授も務める(写真:日経アーキテクチュア)
ともにシーラカンスアンドアソシエイツ(CAt)のパートナーである赤松佳珠子氏と大村真也氏。赤松氏は法政大学の教授も務める(写真:日経アーキテクチュア)
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「山元町役場」(2019年)では、乾式工法の屋根スラブを採用。裏表のない平面とした(写真:吉田 誠)
「山元町役場」(2019年)では、乾式工法の屋根スラブを採用。裏表のない平面とした(写真:吉田 誠)
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大村 フラットスラブでは内どいも使いますが、なるべく雨水の流れが見えるようにしようというのが基本方針です。ただ、建築に裏表をつくらない設計が多いので、一定の面に雨水配管をまとめて隠すという考え方はしません。そうすると、プランを決めるときから、水の流れ道を考えておかないと、うまく解き切れません。

綿密な計画で雨を集水

「流山市立おおたかの森 小・中学校 おおたかの森センター こども図書館」(2015年、以下おおたかの森 小・中学校)ではウレタン防水を使っていますね。

大村 おおたかの森 小・中学校の場合は、屋根の上で断熱を取り、天井懐を小さくすることで、躯体(くたい)量を抑える計画としました。スタイロフォームを屋根スラブに載せ、その上に通気緩衝シートを張ってから、ウレタン防水を施しています。

 ウレタンの吹き付け防水ではスタイロフォームが浮いてしまうので、機械的固定の意味で通気緩衝シートが必要です。吹き付け防水は、コンクリートなどの硬い材料には追従できるようですが、スタイロフォームはけっこう動きますし、脱気が必要ですから。

「流山市立おおたかの森 小・中学校 おおたかの森センター こども図書館」(2015年)。千葉県流山市初の小中併設校として15年4月に開校。地域に開くこども図書館なども併設している(写真:吉田 誠)
「流山市立おおたかの森 小・中学校 おおたかの森センター こども図書館」(2015年)。千葉県流山市初の小中併設校として15年4月に開校。地域に開くこども図書館なども併設している(写真:吉田 誠)
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赤松 ウレタン防水を使うと、塗るだけなので、防水工事はものすごく簡単になります。図面も、驚くほどシンプルです(笑)。でも、おおたかの森 小・中学校は平面がかなり不定形なので、集水の分割の仕方がすごく難しかった事例です。

 水勾配をどう取るのか。高いところと低いところを分割して、どこまでの水をどこに集めるのか。流量計算をしながら検討します。それぞれのドレンがあふれない水量にバランスを取るためです。

 オーバーフローに対しては、集水ルートとは必ず逆側に水の道を設けます。ドレンが詰まったとき、オーバーフローが外部に流れる仕組みが必要ですから。その場合、地上部分の平面計画と一緒に解いていかないといけないので、雨水計画は、本当に複雑で気を使います。

大村 雨水計画図はすべてCAtで図面を描いています。設備の給排水図もいったん事務所内で描くのは、それらの調整を行うためです。

 配管を隠せればよいわけではなく、ブロックごとに平面と設備計画が一体で整理されていたほうがよい。そのため、給排水から雨水まで合わせたダイヤグラム(図解)を描き、雨水だけの原理ではなく、ほかの原理と合わせて作図しながらでないと、なかなか決められないんです。

おおたかの森 小・中学校。防水には超速硬化ウレタン複合防水を用いている(写真:吉田 誠)
おおたかの森 小・中学校。防水には超速硬化ウレタン複合防水を用いている(写真:吉田 誠)
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赤松 そうした検討を重ねて水を落とす位置が決まったら、内部のパイプシャフトの要否や外部に現しにするかなどの検討をします。現しにするときは、排水の縦管をどこで支持するか。サッシの前は望ましくないので、きちんと壁の前にくるようにひたすら調整します。

大村 壁面で縦管を支持すると金物が目立つので、床のデッキに立ち上がりをつくって、そこで支持することもあります。上側の縦管を差し込むディテールにすれば、デッキ上からは支持部分が見えません。仕方なく柱に抱かせるときには、あらかじめフラットバーを出しておくなど、余計な部材が表に出ない形で納められるように配慮しています。

 おおたかの森 小・中学校では、子どもたちに水の流れを見せるために、ランチルームの上にガーゴイル(雨どいの機能を持つ彫刻)をつくっています。

1時間当たり100 mmの豪雨も想定して対策

縦管同士の距離など、水の道の設計にルールはあるのですか。

赤松 水勾配で水の道を逆算していく場合、水上の高さが上がり過ぎないというのが、縦管の本数や位置を決めるときの最も重要なポイントです。スラブ厚で建物の重量も変わってきますから。水上と水下のレベル差は、立ち上がりの高さにも影響するなど、立面や躯体重量など、すべて連動しているんです。

最大雨量はどれくらいに設定しているのでしょうか。

大村 地域にもよりますが、以前は 1時間当たり 50~100mmで計画していました。「宇土市立宇土小学校」(2011年)以降、100~200mm程度を想定しています。熊本はスコールのような雨も降るので、10分間の短期降雨量が仮に降り続いても耐えられるように、余裕を持った計画にしています。

赤松 最近は、1時間当たり100 mmの豪雨が全国各地で年に数回起こり得る気象変動ぶりですから、雨水配管の径を太くしたり、本数を多くしたりして対応しています。

熊本県に2011年に完成した「宇土市立宇土小学校」(写真:吉田 誠)
熊本県に2011年に完成した「宇土市立宇土小学校」(写真:吉田 誠)
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屋上緑化の防水はどのようにしていますか。

赤松 おおたかの森 小・中学校では、部分的ですが、音楽ホールの屋上緑化のほか、テラスに学級菜園をつくっています。今は軽量土壌があるので、それほど難しい納まりではありません。大きな木を植えようとすると、それなりの対応が必要になると思いますが。

大村 緑化部分は周囲に立ち上がりをつくり、ウレタン防水を塗り込んでいます。床スラブの防水面を保護するため、プラスチックのパックのようなものを置き、その上に軽量土壌を敷く納まりです。この防水は、屋上とは仕様が若干異なります。

おおたかの森 小・中学校の昇降口へ通じる外部通路。左手の棟の1階に音楽ホールがあり、その上部を緑化している(写真:吉田 誠)
おおたかの森 小・中学校の昇降口へ通じる外部通路。左手の棟の1階に音楽ホールがあり、その上部を緑化している(写真:吉田 誠)
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おおたかの森 小・中学校の小学校高学年エリアにある「みどりのテラス」。スラブ上に菜園を設けている(写真:CAt)
おおたかの森 小・中学校の小学校高学年エリアにある「みどりのテラス」。スラブ上に菜園を設けている(写真:CAt)
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