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 名古屋市内の大型再開発「グローバルゲート」をはじめ、中部地方を中心に近年、大型建築を設計する機会が多い竹中工務店名古屋支店設計部の長谷川寛氏。内外の空間が一体となった人の居場所づくりを心掛けている。新型コロナウイルスの感染拡大防止といった面からも、こうしたパブリック空間をどうつくるのかは設計者にとっての課題といえる。

建物の内外を一体的に利用できる空間を多く設計していますね。

 私が近年担当するプロジェクトで多くなった大型建築においては、できるだけパブリックな空間が建物の中心にくるような設計を心掛けています。建物が大きくなるほど様々な人が訪れますが、所用を済ませた後にも、そのまま居たくなるような場所が街の中に少ないことを強く感じているからです。

 たいていの場合、建築家は場所の特性を生かし、季節や時間を感じることができる外部空間を積極的に建物に取り込みます。よって居場所とは建物の内部だけでなく、屋外と一体になってこそ価値が高まると思っています。

竹中工務店の名古屋支店設計部設計グループ長の長谷川寛氏(写真:日経アーキテクチュア)
竹中工務店の名古屋支店設計部設計グループ長の長谷川寛氏(写真:日経アーキテクチュア)
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 例えば「グローバルゲート」(2017年)の低層部は商業施設なのですが、内外の境界が曖昧なパブリック空間を各所に設け、多くの植栽を施しました。1階と2階はできるだけ多くの店舗が外部に面する路面店となるようにしています。1階アトリウムは大開口を開放すると半屋外的な空間になり、外部のオープンエアプラザと一体的に利用できるようにしてあります。

 開業から2年以上たって敷地内の緑もずいぶんと育ちました。緑陰ができたことで真夏のかなり暑い日でも外に出ている人が多く見受けられます。

「グローバルゲート」(2017年)の全景。左手の高層タワーは賃貸オフィスとホテルが入居。右手の大和ハウス名古屋ビルは同社と関連企業が入る。2棟の間に商業施設を収めた低層棟がある(写真:車田 保)
「グローバルゲート」(2017年)の全景。左手の高層タワーは賃貸オフィスとホテルが入居。右手の大和ハウス名古屋ビルは同社と関連企業が入る。2棟の間に商業施設を収めた低層棟がある(写真:車田 保)
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多様な居場所をちりばめる

「常葉(とこは)大学静岡草薙キャンパス」(18年)も緑に恵まれたプロジェクトですね。

 18年4月に開校したこの大学キャンパスは、静岡市という温暖な場所に立地しており、外の居場所をつくるのには最適な場所でした。そこで、地方中核都市ならではのオープンに使える新しいキャンパスをつくることを目指しました。ビル型となる都心キャンパスと、豊かな敷地に校舎が分散する郊外型キャンパスの利点を取り入れ、その中に多様な居場所をちりばめています。

 このキャンパスには塀がなく、2階までは誰でも入れます。建物の内外をつなぐ軒下空間やテラスを設けて地域の人々が日常的に立ち寄れるようにしています。2階に諸室を一体的につなぐ 「キャンパスリビング」を設けて学びを教室の外へも開放しました。

 くし形プランとなる上階の校舎は、へこませたところに地上から4階までつながるテラスをつくりました。階高が高いため、テラスを階段の踊り場のようにスキップさせることで上がりやすくしています。学生を見ていると、校舎に入らずにテラスを上がって直接、教室にアクセスしている人も多いようです。

「常葉(とこは)大学静岡草薙キャンパス」(2018年)を南東から見る。敷地の周囲に塀がないオープンなキャンパス。建物の内外をつなぐ部分は、地域の人々を含めた皆の居場所として重要な役割を担う(写真:エスエス)
「常葉(とこは)大学静岡草薙キャンパス」(2018年)を南東から見る。敷地の周囲に塀がないオープンなキャンパス。建物の内外をつなぐ部分は、地域の人々を含めた皆の居場所として重要な役割を担う(写真:エスエス)
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