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スタートアップ出資の1つのゴールは、買収して自社の事業に組み込むことだ。しかしデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めるのであれば、買収してからの運営も重要だ。せっかくのスタートアップを「大企業病」にしてしまっては元も子もない。KDDIとヤフーがこの問題にどう向き合っているのか紹介しよう。

 特集の冒頭で紹介したようにKDDIはスタートアップ投資に熱心だ。CVCであるKDDIオープンイノベーションファンドを通じて70社に出資する。スタートアップには本体からも出資しているので、それらを含めると出資先は100社近い。そしてこのうち20社超を買収した。

 一例がネット通販のルクサだ。商品の取扱期間や数量を限定して販売する手法に強みを持つ。KDDIは2013年にCVCを通じてルクサへ出資し、auユーザーの送客などによってルクサの会員を1年で大幅に増加させた。そして2015年に出資比率を上げて連結子会社にしている。コンテンツ事業の「nanapi」も当初はCVCが出資し、2014年に連結子会社にした。

 KDDIは出資したスタートアップとの連携体制や、買収して子会社にした後の運営体制に工夫を凝らしている。その体制は「育成」「協業」「独立運営」の3段階だ。

 出資したスタートアップとの連携を始めるのは、50人ほどの社員が所属する「ビジネスインキュベーション推進部」だ。同部門は出資したスタートアップの成長支援に専念する。最終的なゴールはKDDIとの協業ではあるが、それだけには限定せずに、様々な成長の可能性を探る。実際に他社と業務提携したり、成長して買収されたりした例もあるという。

図 KDDIの組織構造
図 KDDIの組織構造
スタートアップとの協業を本体につなぐ有機的連携組織が重要
(出所:KDDI資料より日経コンピュータ作成)
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 KDDIとうまく協業できそうだと分かれば、ビジネスインキュベーション推進部でそのスタートアップを担当していた社員がKDDIの新規ビジネス開発組織に異動し、スタートアップとKDDIの協業に専念する。ビジネスインキュベーション推進部はスタートアップの成長支援に専念させ、常に新しい事業の種を探させる狙いだ。