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スタートアップへの投資や協業は決して甘くはない。新進企業と連携したいなら、上から目線をやめて大企業側が変わる必要がある。先行者の苦い経験とその後の改善策が、貴重な教訓になる。

特殊性を学ぶところから始めよう

 スタートアップ投資の落とし穴にはまらないためにはどうすればいいのか。教訓と対策が5つ見えてきた。

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 スタートアップ投資は「ばくち」ではない。山を張って1社に大きく資金を投じては痛い目を見る。スタートアップには破綻がつきものだからだ。2020年1月にはスマホ決済のスタートアップであるOrigamiが「タダ同然」でメルカリに買収された。Origamiには多くの大企業が出資していたが、持っていた株式は紙くずになった。

 スタートアップ投資においても「ポートフォリオ」の考え方が重要だ。出資する際は持ち分法の適用会社にもならない15%未満のマイナー投資にとどめ、なるべく多くの対象に投資できるようにしてリスクを分散する。

 初心者の企業がいきなりCVCを目指すのはいばらの道だ。スタートアップ投資には様々な「ルール」が存在する。例えばベンチャーキャピタリストに対して運用資金の2%を「固定報酬」として、株式の値上がり益の20%を「成功報酬」として支払う暗黙の「2-20ルール」だ。ルールをわきまえなければ、人材確保すらままならない。

 まずは外部の力を積極的に活用するのが現実的だ。スタートアップ投資にはCVC以外にも様々なやり方がある。「いきなりCVCを設立せずに、様々なVCが運営するファンドへの複数のLP投資から始める手がある」と米VCであるDNXベンチャーズの山本康正インダストリーパートナーは勧める。

 LP(有限責任組合員)とはVCのファンドに対する出資者で、GP(無限責任組合員)とは運営者のこと。出資者は投資先の選択などについて口出しはできないが、投資先とは接点が生まれるし、投資にまつわる情報も入手できる。

 事業会社に対してCVCの設立や運営を支援するVCもある。VCのグローバル・ブレインがその1社だ。同社は独立してVCを営むほか、KDDIやソニーフィナンシャルホールディングス、三井不動産のCVCを共同運営する。

 事業会社はCVCに事業シナジーなどを求めがちだが、ファンド運営に当たっては財務的な規律も重要だ。同社とCVCを共同で運営するKDDIの中馬和彦部長は、「財務的な点はグローバル・ブレインが見てくれているので、我々はスタートアップの育成や自社とのシナジー創出に集中できる」と語る。

 VCはスタートアップとの付き合い方を大企業に教えるコーチ役でもある。VCのスパイラル・キャピタルは大企業がスタートアップの成長を支援する「アクセラレーションプログラム」やCVCの運営を受託する。スパイラルは支援プログラムを運営する中で、大企業がスタートアップに要求を押しつけすぎたり、逆にほとんど構わなかったりと、コミュニケーションの難しさを感じてきた。岡洋代表パートナーは「大企業とスタートアップの間に入って通訳する人間がまずは必要だ」と語る。

表 スタートアップ投資の類型
目的に応じた使い分けが重要
(出所:経済産業省「事業会社と研究開発型ベンチャー企業の連携のための手引き(第3版)」を基に日経コンピュータ作成)
表 スタートアップ投資の類型
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