「これまでのリハビリは理学療法士の知識や経験、感覚に依存していたが、先端技術を併用すれば誰でも効果的なリハビリを実践できる」(通所介護施設を運営する早稲田エルダリーヘルス事業団の事業開発グループマネジャーで理学療法士の資格を持つ伊藤太祐氏)――。疾患や老化が原因で低下した体の機能を回復させる「リハビリテーション」が進化している。ここ数年、ロボットやセンサー、仮想現実(VR:virtual reality)などの先端技術を利用し、データを活用したり脳に注目したりする新しいリハビリが続々と登場している。
技術導入でリハビリ効果向上目指す
リハビリの現場に先端技術が浸透してきたのは、以前に増してリハビリの需要が増えていることが背景にある。医療の進歩により脳卒中で倒れても一命をとりとめるケースが増加し、それに合わせて後遺症に直面する患者が増えている。後遺症でまひが残ると、思うように体を動かせなくなってしまう。
2019年版の「高齢社会白書」によれば、要介護に認定された65歳以上の高齢者は、ここ10年増加の一途をたどっている。要介護となる原因は認知症に次いで脳卒中が多い。寝たきりではなく自分で動ける生活を送れるようにするなど、患者のクオリティー・オブ・ライフ(QOL)の向上が必要とされ、効果の高いリハビリが求められている。自力で歩けなかった人がリハビリの結果歩けるようになれば必要となる介護の程度が下がる。要介護の患者の割合を減らせれば、介護費の節約にもつながる。
これまでリハビリの効果は、リハビリを支援する側の手腕とリハビリを受ける側の意欲に大きく依存してきた。理学療法士がまひなどの障害の残る患者の手足を直接動かし可動域を広げ、筋力トレーニングを実施するが、自身の知識や過去の経験、感覚を基にしている。裏を返すと理学療法士の経験年数や個人の技量で効果に差が生じる可能性がある。リハビリを受ける側の意欲がなければ効果を高めることは不可能だ。患者をやる気にさせることもリハビリの効果を高めるために重要になる。