内田洋行は業績回復を目指し、オフィスの新設を機に働き方改革を始めた。まだ「働き方改革」という言葉が一般的ではなかった9年前のことだ。自社で培ったコンサルティングのノウハウを駆使して実践したところ、社員が営業活動により多くの時間を費やせるようになったり、改革の中で得たアイデアを基に新商品を開発したりする成果を得ている。
他のオフィス家具メーカーと比べて業績回復が遅れている。現場の社員に目を向けると「一生懸命仕事をしているのに報われない」といった閉塞感が漂っている。なんとかしなければ――。
約9年前の2011年、こうした課題に直面し、働き方改革を始めたのが内田洋行だ。オフィス家具をはじめとするオフィス関連事業のほか、公共関連事業、情報関連事業を展開。情報関連事業では、会議室予約システムの「SmartRooms」のほか、「wivia」「ClickShare」といった会議室などに設置したディスプレーにノートパソコンの画面を簡単な操作で映し出せるワイヤレス投影システムなども手掛ける。
今でこそ働き方改革の流れを受けて、首都圏を中心にオフィス環境の構築ビジネスなどが好調な内田洋行だが、2011年ごろは違っていた。2008年のリーマン・ショックでオフィス家具の販売やオフィス環境の構築需要が低迷していた。他のオフィス家具メーカーはリーマン・ショック後に業績を持ち直してきたが、当時の内田洋行は他社に後れを取っていた。
こうした状況を打破する転機にしたのが、2011年11月の「新川第2オフィス」の新設だ。内田洋行の新川本社のすぐそばに位置するオフィスだ。2012年に入ってから他拠点にあった部署が移転する予定だった。「移転に先立ち、自社で働き方改革に取り組むことで、業績回復や現場の閉塞感を打破することを目指した」と内田洋行の矢野直哉経営企画統括部第二企画部部長は当時を振り返る。
自社で培ったノウハウを生かし社員200人以上で改革
同社の働き方改革は社内に蓄積したノウハウを活用することにした。具体的には2010年ごろから自社で提供してきた「Change Working ワークスタイル変革コンサルティングサービス」を生かすことにした。
このサービスはこれまで社内で蓄積したワークスタイル変革のノウハウを踏まえて立ち上げた。内田洋行は1989年、ワークスタイル研究の専門組織「知的生産性研究所」を設立し、ワークスタイル変革術を培ってきた。このサービスの特徴は社員1人ひとりが創造性、効率性、躍動性を高められるようにすることを目指して、社員が自ら実現したい働き方のイメージを明確化。そのうえでその働き方を実現するためのプロセスを具体化し、形にしていく点だ。
内田洋行は自社が手掛けるこのサービスを使って社内の働き方改革に乗り出した。具体的には2011年の8月から11月にかけて、新川第2オフィスに移転する全社員を対象にワークショップを開催。「働き方改革の目的」「目的を遂行するために社員が行動を変えていくべきシーン」「各シーンで行動を変えていくための具体的な施策」を洗い出していった。
延べ200人ほどの社員がアイデアをより多く出すための「発散のためのワークショップ」や、取り組むべき施策などをまとめていく「収束のためのワークショップ」に参加して議論を重ねていった。
その結果、働き方改革の目的として「社員が顧客の身近な相談相手になり、スピード感を持って課題を解決していくような顧客の良きパートナーになろう」「顧客の課題に合った解決策を社員1人で導き出すのには限界がある。社内組織の壁を越えて助け合いながら一丸となって顧客にサービスを提供するチームビルダーになろう」などが挙がった。