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 家づくりの元受け工務店は多くの場合、付き合いの深い専門工事会社のネットワークを持っているものだ。各職方もお互いに“なじみ”であることが少なくない。しかし現場によっては、いつもと違う職方が加わることもある。職方同士のコミュニケーションがうまくいかず、現場の雰囲気が悪くなり、作業の効率や品質に悪影響を及ぼすこともある。

事例1
若い監督が職人になめられていて無法地帯

 住宅の現場では現場監督の統率のもと、職方同士がお互いに融通し合うことで効率よく工事を進めるのが一般的だ。だが、昨今は現場監督が職方を統率できず、職方同士のコミュニケーションが取れていない現場が増えている。少し前に断熱施工会社のAさんが関わった現場もその1つだ。

ベテラン大工職が経験の浅い現場監督を見下して、自分都合ばかりで好き勝手に現場を動かしていた(イラスト:anne)
ベテラン大工職が経験の浅い現場監督を見下して、自分都合ばかりで好き勝手に現場を動かしていた(イラスト:anne)
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 その現場は若くて経験の浅い監督が担当しており、知識不足が災いして大工に見下されていた。その大工はやり取りのなかで現場監督を煙に巻き、自分のやりやすい下地や手順を承認させようとする。その殺し文句は「監督の指示どおりにやると工期に間に合いませんよ」。現場監督には反論する知識がなく、さらに工期順守を会社から厳命されているため、いいように大工に言いくるめられている。そうした雰囲気はその他の職方にも伝わり、一部の職方が自分の都合を優先して作業を進めるようになっていた。後から施工する職方のことを考えないので、各所で手戻りや品質低下が生じていた。

 Dさんに影響が生じたのは、床断熱のセルロースファイバーのシートを押さえる桟木が大引に施工されていなかったことだ。Dさんが大工に尋ねると「現場監督が『これでいい』と言った」と大工は強弁する。Dさんは現場監督のところに行って「これではシートがきちんと張れず、施工できない。大工に指示して桟木を取り付けてほしい」と頼んだ。現場監督が「あの大工は自分の言うことを聞かない」と暗い顔でこぼすので、仕方なくDさんも現場監督と一緒に、大工に頭を下げて桟木を施工してもらうように頼んだ。大工は渋々桟木を取り付けたものの、その分断熱施工の開始が遅れ、工期が半日伸びてしまった。

 このほか断熱工事に関わるところでは、貫通スリーブに気密処理がされていないなど、電気工事にも不備があった。これも電気工事の専門工事会社が現場監督の指示を無視した結果だ。このまま断熱施工ができないわけではないが気密性能が低下し、結露の原因にもなり兼ねない。Dさんが現場監督に指摘したところ、現場監督は電気工事会社の職方に指示するのを嫌がり、自分でスリーブ管の周囲にシーリング施工をした。Dさんはこの工務店は長くないと感じ、徐々に手を引いて行こうと決めた。