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 家づくりでは建て主の要望が第一。確かにその通りだが、元受け会社が建て主に言われるままに対応することで、現場が混乱するケースは少なくない。設計上の追加や変更が重なることで、作業の手戻りなど現場の効率が悪くなり、職方に必要以上の負担を掛けてしまう場合がある。施工ミスなど不具合の発生にもつながりやすい。

事例1
追加・変更の連発で常に残業

 現場で職方に嫌われるのが「手戻り」。手戻りの原因の代表例は、建て主の要望による設計上の追加・変更だ。大工職のAさんが最近関わった工務店の現場では、棚の追加や仕上げ材の変更、流し台の取り付け位置の変更など、設計変更や設備などの追加が常態化していた。そのたびに下地を補強し直したり、建具枠をつけ直したり、収納の設置位置をずらすなどの手戻りが生じていた。

「お客様は神様」。だが建て主の要望を言われるままに受ける元請け会社の場合、現場で手戻りやロスが発生しがちだ(イラスト:anne)
「お客様は神様」。だが建て主の要望を言われるままに受ける元請け会社の場合、現場で手戻りやロスが発生しがちだ(イラスト:anne)
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 度重なる追加・変更に、Aさんは毎回「またあったら文句の1つも言ってやる」と思うのだが、現場監督が土下座でもしそうな勢いで頼み込んでくるのに情をほだされ、応じてしまっていた。時には夜遅くまで残業したり、休日に現場入りしたりしてなんとか工期に間に合わせた。

 この工務店の現場で追加・変更が多発した原因は、営業担当者にあった。契約を取るために「現場に入ってからでも変更・追加に柔軟に対応します」と建て主に伝えていたため、建て主は軽い気持ちで申し出るという流れが生じていたのだ。現場監督は営業担当者に抗議していたのだが、営業担当者の方が立場上、力が強く、社長も知らん顔。営業担当者は「工事金額を増やせば自分の営業成績も上がる」とすら考えていたようだ。

 さらに追加・変更では工程上のタイミングなど全く考慮されず、先に仕上げていた箇所を壊してつくり直すこともあった。こうなると、手戻りだけでなく仕上がりも悪くなる。実際、この現場ではそうした箇所が完成後にクレームとなり、補修を求められたという。またこの工務店はもともと設計担当者が少ないため、追加・変更に対応した図面もなかなか現場に回ってこなかった。追加・変更に関する図面が最終的に作成されなかった施工箇所も多く、そうした箇所は現場監督が口頭で指示しながら施工していた。監督の指示が曖昧な場合もあり、Aさんは監督が営業担当者と意思疎通が図れているのか、不安に思いながら作業することもしばしばだった。

 Aさんがこうした厄介な元受けと継続的に関わってきたのは、追加・変更に関する支払いはきっちり応じてくれることと、現場監督との信頼関係があったからだ。しかし直後にこの工務店から請け負った別の現場でも、やはり追加・変更で工期が大幅に超過。他の元受け会社から依頼されていた仕事にも影響が及んだことから、Aさんは「この工務店の仕事から離れよう」と考え始めている。