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 元請け工務店にとって「現場」は、自社の技術力や品質を建て主にアピールする重要な舞台だ。しかしそうしたアピールが行き過ぎると、現場を担う職方たちの作業効率やモチベーションをかえって低下させてしまう。元請けが「よかれ」と思って実施することが、現場の職方たちにとっては深刻な負担となるケースもある。

事例1
イベントがとにかく多い工務店

 住宅の現場に関わる職方は、週休1日のペースで働いているケースが多い。それだけに終業後の時間や休日を大事にする傾向が強く、こうしたオフの時間に賃金が発生しない要件で拘束されることを嫌がるものだ。

 水道工事会社のAさんは、ある工務店が受注する仕事でほぼ“レギュラー”として関わってきた。その工務店はAさんの会社など、付き合いの深い協力会社を束ねる「施工者の会」を組織している。この会では季節ごとに集会を開催し、関係する職方同士が集まって施工上の検討課題などを話し合っていた。開催日は通常、現場が動いていない日曜日。Aさんも「休みを丸々潰されるのは嫌だが、現場がスムーズに進むなら悪くない」と自分に言い聞かせて、小まめに参加していた。

元請け工務店の建て主へのアピール策で、上棟式に全職方が参加を強いられる。職方にとっては大きな負担に(イラスト:anne)
元請け工務店の建て主へのアピール策で、上棟式に全職方が参加を強いられる。職方にとっては大きな負担に(イラスト:anne)
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 ところがこの工務店の社長は、施工者の会がうまく機能していると感じたのか、勉強会や親睦のゴルフコンペなど、開催頻度を徐々にアップ。法制度改正や最新工法について学ぶ勉強会はともかく、ゴルフコンペは完全に社長の趣味に端を発したイベントだ。交通費などは工務店持ちだが、仕事上の関係を引きずったゴルフを楽しめるはずもなく、Aさんら職方の間では総じて評判が悪かった。

 いつの間にか、施工者の会の集まりは2カ月に1回程度の頻度に増加。そこに追い打ちを掛けたのが、この社長が打ち出した新たな取り組みだった。それは、建て主に向けたアピールの一環。上棟式の際に自社のスタッフだけでなく、現場に関わる全ての職方にも集まってもらい、建て主に挨拶してもらうという取り組みだ。

 この工務店では新築を年間20棟程度建てており、Aさんはそのうち約半数の現場に関わっていた。上棟式は建て主の都合を考慮して、主に日曜日に実施することが多い。それぞれの式にフル参加すると、それまでの集会に加えて、月に1回は日曜日の半日が潰れることになる。

 「上棟式に職方全員を参加させるのは、元請けにとって営業上のパフォーマンスだ。私たち職方を無償で付き合わせるのはおかしい」。Aさんはそう感じた。仲の良い他の職方からも同じような声が上がっていた。その後、Aさんは実際にこの工務店の案件で何件かの上棟式に参加したが、不満は募る一方。現在は、この工務店の仕事を徐々に減らすことを狙って、他の工務店に積極的に営業を掛け始めているという。