全3022文字
PR

 この連載で紹介してきたケースで分かるように、住宅の専門工事を担う職方たちは元請け会社のことをきめ細かく見ているものだ。長年の付き合いがあっても、不満が一定のラインを超えるとシビアに去っていくケースは珍しくない。建築業界全般で人繰りが厳しい時代にあって、職方に敬遠されることは元請けにとって死活問題につながる。

 「職方に選ばれる工務店」であるために何が必要なのか――。取材した職方たちの声から、元請け会社が取り組むべきことを整理してみた。

大工職に施工管理を委託する手も

 職方が工務店を評価する視点はドライだ。突き詰めると、現場で費やす労力や時間に対して受け取る対価が十分かどうか、という視点だ。逆に言えば、職方にとって「手離れの良い現場」を実現するか、手戻りなど余分に生じた手間に見合う対価を支払うか、いずれかがカギになる。

 手戻りがいくら生じても、その分だけ支払いを増やせば、その後も継続的に仕事を受けてくれる職方は少なくないだろう。しかし元請け会社自体が受注の伸び悩みに頭を痛めがちな現在、外注費を無制限に増やすわけにはいかない。そうなると、腕の良い職方を確保する手段は、「手離れの良さ」を実現するためのきめ細かな施工管理が重要になる。

元請け会社の工程表どおりに現場に入ったが、前工程が終わっていなくて作業できなかった(イラスト:anne)
元請け会社の工程表どおりに現場に入ったが、前工程が終わっていなくて作業できなかった(イラスト:anne)
[画像のクリックで拡大表示]

 きめ細かな施工管理を実施するうえでは、現場監督に一定以上の技術力と経験が不可欠。この連載の第1回「工程表がいいかげんで作業が予定どおり進まない!」や第2回「“人”が原因で現場がギスギス、作業の効率や品質も悪化」のようなケースでは、いずれも施工管理が機能していない点に本質的な問題がある。

ベテラン大工職が経験の浅い現場監督を見下して、自分都合ばかりで好き勝手に現場を動かしていた(イラスト:anne)
ベテラン大工職が経験の浅い現場監督を見下して、自分都合ばかりで好き勝手に現場を動かしていた(イラスト:anne)
[画像のクリックで拡大表示]

 だが現実的な問題として、元請けによっては現場を担う“人財”に乏しい会社もあるだろう。育成にはある程度の時間も必要だ。こうした社内事情に悩みを抱える工務店のなかには、技術力や経験に秀でた常用の外部大工職に事実上、監督業務の重要な一部をサポートしてもらっている会社もある。建て方工事中に現場入りする専門工事職との段取り調整や建材・資材の受発注などが依頼内容となり、その分だけ作業単価も上乗せしている。ただし、建て方工事の前段階や、後段階の仕上げ工事などは、元請けの現場監督が単独で施工管理を担うことになる。

 他方、最近ではスマートフォンで使える「施工管理アプリ」を活用する元請け工務店も増えてきた。現場に行かなくても異なる工種の施工タイミングを把握したり、前工程・後工程などをスムーズに連携させたりしやすくなる。各職方がアップロードした現況画像で、進捗状況なども会社全体でリアルタイムに確認でき、チャット機能を用いて質疑も時間を置かずに済ませられる。こうした身近な情報通信技術を取り入れることも、職方にとっての「手離れの良さ」を実現する1つの方法として有効だろう。