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遠隔操作に端を発する制御キー

 タイプライターではシフトとリターン程度しかなかった制御キーは、キーボードと制御対象の位置が離れるにつれてその数を増していった。遠隔地のマシンを制御するキーである。

 まず初めに登場したのが、2台の電動タイプライター相互のキーボードとプリンタの間を遠隔地間で結ぶことで文字による通信を実現する「印刷電信機」である。その製品名から「テレックス」や「テレタイプ」と呼ばれるものだ。

米Teletypeの印刷電信機「MODEL 33-ASR」
米Teletypeの印刷電信機「MODEL 33-ASR」
紙テープの読み取り、遠隔地の印刷電信機を制御して文字を打ち出す。通称「ASR-33」と呼ばれ、社名のTeletypeが印刷電信機の代名詞となるほどの売れ行きを見せた。写真はDavid Gesswein氏所蔵(同氏の運営するPDP-8関連のページはhttp://www.pdp8.net/)。
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「MODEL 33-ASR」のキーボード
「MODEL 33-ASR」のキーボード
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 キーボードから遠く離れたプリンタを制御するために、文字以外のコードが数多く盛り込まれた。例えば、作表時の文字揃えに使う「タブ(TAB:Tabulate)」や、通信相手のベルを鳴らす機能などである。

ASCII 文字コード表の制御コード
ASCII 文字コード表の制御コード
印刷電信機が遠隔地の印刷電信機を制御するために用意された
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 文字を電子化するということは、それぞれ個別の文字にコードが割り当てられるということである。コード表に従って、「A」や「F」、「$」といった文字が再現される。これに対し初期のタイプライター、特に安価な普及機には数字の1と0のキーがなかった。1と0のキーがないタイプライターでは、数字の1は英字のIを、数字の0は英字のOでそれぞれ代用していた。タイプライターは、人間が印字結果を読み取れればそれで良しとしたため、数字と文字の明確な区別は必要なかったからだ。

 テレタイプでは、通信する相手が機械なので、数字と英字を区別できるように英数字のキーが個別に用意された。とはいえテレタイプの印字結果を読み取るのは人間である。文脈で0とO、1とIを判別できれば事足りる。そのため実際は1とI、0とOが混在して使われていたようである。しかしここにおいて、キー入力をコード体系に従って符号化するコンピュータ用キーボードのひとつの形ができたと言えよう。