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 「国内回帰といっても、頼るべき町工場が廃業している」「困ったからと言って頼りにされ、コスト増分は負担しろとは虫がよすぎる」――。日経クロステック//日経ものづくりが2020年3月に実施したアンケート調査の自由記述からは、現場からの不満の声が聞こえる。2020年3月に世界保健機関(WHO)が「パンデミック」を宣言した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下新型コロナ)」。危機は進行中で状況は刻々と変化しているが、この連載リポートでは「新型コロナ危機」に直面した製造業のこれまでの2カ月をまとめている。今回はアンケートの自由記述に寄せられた中から特に興味深い回答について電子メールなどで追加取材。製造業の最前線に立つ経営者や研究・開発者、調達・購買担当者などの生の声を紹介する。

 新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)流行によって、日本の製造業が抱えていた隠された問題点があぶり出されている。例えば「下請け」企業の見えない負担だ。

部品供給の遅れによる国内生産の遅延、停止が57.2%で最も多かった
部品供給の遅れによる国内生産の遅延、停止が57.2%で最も多かった
Q「新型コロナウイルス感染症が与える悪影響としては何が想定されるか(複数選択可)」への回答。調査方法:ニュース配信サービス「日経ものづくりNEWS」の読者を対象に、アンケート用URLを告知した上で回答を依頼。2020年3月10~13日に実施し、477の回答を得た(出所:日経ものづくり)
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 「部品や材料の調達を中国に依存しすぎている」という指摘は以前からあった。中国依存から脱却するため、複数購買などによるリスクヘッジの必要性を訴える向きも多い。

 日経ものづくりが2020年3月に実施したアンケート調査の自由記述欄で数多く見られたのは、「リスクヘッジに要するコストを誰が負担するのか」という疑問だ。そして「その負担を『下請け』業者が負うのは困難。コストを価格に反映させて適正価格で売買し、ユーザー(発注者)がコストを負担すべきだ」という主張である。

 部品調達が滞った発注者から急に生産量増と納期厳守を迫られ、そのコストを販売価格に反映させたくても認められず、「責任だけ負わされるのを許容できないメーカーは、事業から撤退する以外ない」とまで訴える回答もあった。

コロナショックが「供給網再編」「自動化」を後押し

 新型コロナ流行がサプライチェーンの再編を促すと見る回答はアンケートで目立った。生産拠点の中国からの撤退や周辺国への分散、あるいは生産の国内回帰といった様々な動きが加速するのは間違いなさそうだ。

 生産・物流の自動化が進むと予想する回答も数多く見られた。万が一、工場の作業者から新型コロナ感染者が見つかった場合、クラスター(感染者の集団)発生を防止するために従業員の自宅待機や隔離が求められるケースもあり得る。現実に中国ではこうした事態が発生。工場が稼働せず、サプライチェーンが寸断されてしまった。ロボットや無人搬送車(AGV)などを採用して工場の自動化を進めていれば、疫病による工場の生産停止といった事態を防げる。こう考えるのは自然な流れと言える。

 中国依存の見直しも工場自動化の動きも、今に始まった話ではない。中国における人件費上昇などを受けて、生産拠点の分散を計画している企業はあった。世界的に広がっている生産人口の減少や作業者の高齢化に対応するため、工場自動化に取り組む企業も多い。こうした改革をコロナショックが後押しする形になりそうだ。

 新型コロナ流行の終息が見えない段階ではあるが、その後を見据えて「今できることを実行し、次世代のスタッフに希望を与えられる事業を作らなければならない」とする意見もあった。