(前編はこちら)キャパシターを使った自発光式道路鋲(びょう)で、アフリカでの事業展開に大きな手応えを感じた辻プラスチック(本社滋賀県東近江市)。しかし、事業拡大にはODA(政府開発援助)による道路工事受注が欠かせず、同社だけではどうにもならない。
漫然とODAの成約を待っていてもしょうがない。他の事業にも道路鋲の技術を応用できないか――。そこで思い出したのが、タンザニアに道路鋲の設置に行くたびに痛感していた「電気がない」という悩みだった。
電気がきていない村に明かりを
アフリカでは人口の3分の1にも及ぶ6億人が電力網にアクセスできずにいる。さまざまなベンチャー企業が参入して問題解決に取り組んでいるが、ソリューションの多くは一旦電気を鉛蓄電池に蓄える方式。タンザニアでも日本のベンチャー企業がLEDランタンの貸出事業を展開しており、周辺住民にも好評だ。
しかし鉛蓄電池は、使い切ってしまうと充電のために遠く離れたショップに歩いていかなくてはならない。しかも、寿命が短く1、2年で交換が必要。現時点では容認されているものの、その結果として大型の鉛蓄電池が普通ゴミとして不法投棄されているという問題も起こっている。
そこで同社が開発したのが、キャパシターを使ったソーラーチャージャーだ。鉛蓄電池のように一旦蓄電してからLEDランタンのような機器を充電するのではなく、太陽電池で発電しながら同チャージャーを介してLEDランタンなどを充電する。同チャージャーをバッファーとして利用することで、太陽電池の発電量の変動を吸収し、安定した充電が可能になる。安定充電できるよう電流制御用のCPUを内蔵しており、最近日本でこの電流制御の技術の特許を申請した。
このチャージャーを使えば、ショップまで10kmも歩かなくても、昼間に放っておけば充電できる。鉛蓄電池にはできない高速充電も可能だ。キャパシターは10〜20万回の充放電が可能で10年程度使える。数年で容量が減ってしまう鉛蓄電池やLIBに比べて大幅に長持ちする。
制御ソフトは辻社長自ら開発したという。同氏はもともと機械設計が専門だが、デジタル回路を自分で勉強し実装できるまでになった。「自力でCPUを使った電源制御をしたかったんです」。経営者の顔から技術者魂が垣間見える。