「新たな価値を創造するのが仕事」――。こう話すのは、製品のデザインやプロデュースを手掛けるマナブデザイン(manabu design、東京・中央)代表取締役の高橋学(マナブ)氏。同氏に初めて会ったのは2021年の3月のこと。「ものづくりの技術を生かして子供たちにSTEM(科学、技術、工学、数学)教育をしたい」と筆者らも交えて10社ほどの町工場が集まった際に、相談をもちかけたのがきっかけだった。話をしてみると、人脈を広げる「人つなぎ」、事業を創造する「コトおこし」をキーワードに活動する高橋氏の話にぐいぐい引き込まれていった。
驚いたことに、話をしてみると本連載や前身の連載で取り上げてきたHILLTOP(京都府宇治市)の山本勇輝氏、浜野製作所(東京・墨田)のCEO(最高経営責任者)浜野慶一氏、京都試作ネットの鈴木滋朗氏〔最上インクス(京都市)社長〕、明興双葉(東京・中央)の大坪正人氏〔由紀精密(神奈川県茅ケ崎市)代表取締役〕など、すご腕の町工場と既につながりがあった。
ものづくり企業の持つ魅力
多くの「町工場」とのつながりを持つ高橋氏。最近は大きな進化を遂げているところが増えたと感じていて、「町工場」という単語にはプラスのイメージを持っているという。
町工場といえば、溶接、切削、板金など、油にまみれて懸命に作業をしている3K(きつい・汚い・危険)職場という印象。下請け仕事が多く、表舞台に出ることはほとんど無かった。しかし、HILLTOPも最上インクスも由紀精密も、もとは町工場だが、航空・宇宙、医療などの分野に進出。量産のみならず試作も数多く手掛け、業容が大きく広がっている。
それだけではない。上記の企業らは、熱意さえあれば、どんなものづくりの困りごとの相談にも耳を貸してくれる。「これが造りたい」といった具体的なアイデアを持って飛び込めば、「こうやったらできる」と答えてくれる。図面が無くても構想さえ固まっていれば図面を起こすところから付き合ってくれる。「どうすれば自分たちが力になれるか」を真剣に考えてくれるのだ。
相談をもちかけてくる町工場も、主体的に動くところが増えてきた。ワークショップやイベントを開催すれば、「色々なアイデアを持って町工場が参加してくれる。マインドもかなり変わってきている」(高橋氏)。