今回訪れたのは、自動車用ボールジョイント大手のソミック石川(東京・墨田)を中核とするソミックグループの新会社ソミックトランスフォーメーション(浜松市)だ。これまでとは異なる分野・規模の企業との連携を深めて新事業を開拓すべく、ソミック石川から独立する形で2021年の11月に設立された*1。
汎用技術を使いこなして新事業を切り開く
現在、ソミックトランスフォーメーションが注力している新規事業の代表格が、作業支援ロボット「SUPPOT」(サポット)だ。100kgまでの重量物を運べる電動式4輪自動運転車で、遠隔操作に加えて人への自動追従が可能。悪路や傾斜のある不整地も走行できる高い走破性を持つ。既に建設・土木作業の現場での資材運搬などに使われ始めている。
実機の走行を見せてもらうと、確かに階段などの段差も大きな車輪をうまく接地させながら難なく上り下りしていた。さすがのサスペンション性能は、本業が自動車部品メーカーであるソミックグループならではだ。
SUPPOTに搭載している周辺マップ生成や自己位置推定、軌道生成などの人工知能(AI)を使った機能は、基本的に社内で全て開発した。汎用のリアルタイムOSなどの“有りもの”を徹底的に活用。要素技術そのものではなく、あえて応用実装技術に開発資源を集約したという。
特別に見せてもらった制御系のハードウエアも、汎用品をうまく活用して機能・性能・コストのバランスを調整していた。汎用品を活用するPC制御を本業としている筆者(川野俊充)としては、オープンな技術やコンポーネントの組み合わせでここまでできるのかと大いに感嘆した。
実装方式から想像するに、例えば「人体を認識するのにどのような仕様のセンサーが必要か」という目的から手段を選択するのではなく「このセンサーで人体を認識するにはどうするか」という手段ありきで目的を果たすため、多彩なアイデアをひねり出しているようだ。こうした汎用技術の応用に関するノウハウは、要素技術の汎用化が進む今日において、競合との差異化を図る上でこれからますます重要になるだろう。