3D-CADや3Dプリンティング(付加製造:AM)の業界で知らない人はいない――。そう言っても過言ではないのが、今回訪問したExtraBold(東京・豊島)を創業した原 雄司氏だ。格闘家でもある。30年以上前に3D技術の可能性を敏感に感じ取り、破壊的なイノベーションを量産してきた。
高速で大型のプリント
ExtraBoldは、工業用の大型3Dプリンターおよび同プリントヘッドの開発と、それを使った製造受託などを手掛けている。そんな同社の代表製品が、主要部品を国産品だけで構成する付加製造(AM)装置の量産機「EXF-12」だ。2021年9月にリリースした。装置の大きさは12フィートコンテナほどで、200Lのドラム缶に相当する大きさのものを5時間で造るという造形速度と、クルマのボンネットにも対応できる1.7×1.3×1.0mの大きな造形エリアが特徴だ。製造業向けの本格的な工作機械としての性能を誇る。加えて、汎用ペレット材はもちろん、リサイクル材を含む様々な熱可塑性の樹脂材料を利用できる。
EXF-12の開発の一方で、原氏は樹脂のリサイクルにも力を入れる。日本では、化学メーカーが顧客の企業に依頼されて特定の製品用の樹脂を開発するケースも多く、ちまたに色々な樹脂があふれている。そのため、廃棄やリサイクルが簡単にできないという事情がある。そこで原氏は、「同種の樹脂を集めやすい工場内で、付加製造装置を使ってリサイクル材で治具を造るなどすれば、それだけでも樹脂の使用量を削減できる」と語る。
将来は、ロボットや一般の工作機械にも取り付けられる3Dプリントヘッドを開発し、日本の狭い工場でも使えるようにしたいとの構想を描く。「工作機械を担当させてもらえるというのは日本のエンジニアにとって、簡単に言うと営業マンが社用車を1台与えられるのと同じ。愛着ある工作機械を押しのけて3Dプリンターを導入するというのは現場の反発が結構大きいだろう。しかし、使い慣れている工作機械の主軸に付加製造のプリントヘッドを取り付けてパワーアップできるなら、使わない理由はないはず」(同氏)という。
さらに、現在の樹脂用のプリントヘッドに加えて、食糧用や金属用などさまざまなヘッドの製品化も視野に入れている。原氏が最終的に目指しているのは、付加製造装置のプリントヘッドメーカー。狙っているのは3Dプリンター市場ではなく、むしろ工作機械市場。日本の工作機械と同等の性能で、日本が誇る技術と品質のヘッドを開発できればチャンスは十分あると確信しているようだ。