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インドの乗用車市場で5割のシェアを持つスズキ。中長期的な市場拡大が見込めるため、インドで新工場を次々に建設している。ゼロから工場を構築できる利点は大きい。日本では既存工場の制約があり、小規模な改築を繰り返すしかないが、インドでは生産ラインの理想像を追求できる。その成果が出始めてきた。

 「日本でできなかった生産の理想像を、インドのグジャラート工場で実現する」。同工場の立ち上げに関わったマルチ・スズキ(Maruti Suzuki India)の技術者はこう説明する。直線的な工場レイアウトを採用し、部品を搬送する際のムダを省く。工程間のバッファーを少なくし、工場の面積を最小限に抑える。

 こうした取り組みは、「新工場を建設するタイミングがないと難しい」(同技術者)という。既存工場の改築を繰り返す日本では、思い切ったレイアウト変更が難しい。中長期的な成長が見込めるインドだからこそ、ゼロから理想的な工場を造れる。生産ロボットや自動化などの要素技術は日本で開発しているが、「それらを組み合わせた全体的な生産システムは、グジャラートが最も進んでいる」(同技術者)。

インドが生産の55%を担う

 スズキはインドに3つの4輪車工場を持つ(図1)。マルチ・スズキの工場であるグルガオン工場とマネサール工場、スズキ100%出資の生産拠点であるグジャラート工場だ注1)。グジャラート工場で生産した車両はマルチ・スズキが100%買い取って販売する。

図1 インドの4輪車工場
図1 インドの4輪車工場
グルガオン工場とマネサール工場はマルチ・スズキの工場だが、グジャラート工場はスズキが100%出資する。スズキの資料を基に日経Automotiveが作成。
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注1)このほかに、2輪車を生産するSMIPL(Suzuki Motorcycle India Private Limited)という工場もある。

 3つの工場によるインドの自動車生産台数は、2018年度(2018年4月~2019年3月)に約185万台だった(図2)。同年度のスズキの世界生産台数は約334万台であり、実に55%をインドが担う。

図2 インドで185万台を生産
図2 インドで185万台を生産
スズキの資料を基に日経Automotiveが作成。
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 スズキは1983年にグルガオン工場でインドの国民車「マルチ800」の生産を開始して以来、ほぼ右肩上がりでインドの生産台数を増やしてきた。2002年にマルチ・スズキがスズキ子会社になると、新車種の積極的な導入や設備投資の増強によって、一気に生産台数を伸ばした。2006年にマネサール工場が生産を開始し、2017年にグジャラート工場が立ち上がった。2018年6月には累計2000万台の生産を達成した(図3)。日本では累計2000万台の達成に45年9カ月かかったが、インドでは34年5カ月に短縮できたという。

図3 インドで累計2000万台を達成
図3 インドで累計2000万台を達成
2000万台目は、グジャラート工場で生産した「スイフト」だった。(出所:スズキ)
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