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2019年から2025年までに年平均で約20%成長し、2025年の世界市場は約350億米ドル(1ドル110円換算で3兆8500億円、米Grand View Research調べ)。こんな高成長が期待されるテクノロジー分野がある。AI(人工知能)やIoTなどの先端技術を駆使する「スポーツテック」だ。先頭を走る米国で開催された、世界最大級のスポーツ産業カンファレンス「MIT SSAC 2020」で見えた最前線を報告する。

 国内のプロスポーツではここ数年、スタジアムやアリーナを訪れるファンの購買データなどを取得してマーケティング施策に活用する取り組みが広がっている。これに対して、“データ先進国”の米国のプロスポーツ界はもっと進んでいる。今回紹介された事例を2つ挙げよう。

 1つはコンサルティング会社の米Deloitteが紹介した事例だ。スポーツの試合観戦に訪れたファンの詳細な位置情報を解析した。チームが自分たちのファンの行動をより深く理解し、マーケティング施策などの立案に役立つとする。

 同社が紹介したのは、2019年12月3日から12月8日までにボストン地域で取得したデータ。この期間には、米国の4大スポーツのうち、NBAのボストン・セルティックス、アイスホッケーNHLのボストン・ブルーインズ、NFLのニューイングランド・ペイトリオッツの試合が開催された。Wi-Fiのアクセスポイントから精度が高い位置情報を検出する技術を持つ米Skyhookの協力を得た。

 Deloitteによると、試合観戦に訪れた人の合計5万3000の端末から位置情報を取得した(図1)。チームが保有するデータは使っていない。

図1 位置情報からスポーツファンの行動が明らかに
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図1 位置情報からスポーツファンの行動が明らかに
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図1 位置情報からスポーツファンの行動が明らかに
Deloitteは、位置情報サービス提供会社のSkyhookの協力を得て調査した、ボストン地域のスポーツファンの位置情報データを紹介した。2019年12月3日~同8日にボストンで開催されたプロの試合で実施。5万3000の端末の位置情報を得た(左)。地図内の白い点はその分布。(右)はアメフト(ペイトリオッツ)、バスケ(セルティックス)、アイスホッケー(ブルーインズ)のそれぞれのファンが試合後に立ち寄った店。マクドナルドとダンキンドーナツが人気で、スターバックスの人気が他の地域より低いという。(図:Deloitte)

 それによると、ボストンのスポーツファンの男女比はほぼ半々。人種は白人が82%と多く、黒人が6.6%、アジア系が5.3%。年齢はミレニアル世代(1980年代から1990年代半ば生まれ)以下の割合が27%と、国勢調査の63%と比較してかなり低い。40代以上の層が中心である。

 ユニークなのは、各チームのファンが試合前と試合後にどこに立ち寄ったかというデータだ。

 試合前の一番人気は、いずれのファンもダンキンドーナツ。一方、試合後の一番人気はペイトリオッツとセルティックスのファンがマクドナルド、ブルーインズはダンキンドーナツだった。米国ではやはり、大手食品チェーンの人気が高いことが明らかで、チームのマーケティング戦略の王道はこうしたチェーンと組むことにあるが、Deloitteの講演者は「未開拓のマイノリティー(人種)のファンに、成長余地があるかもしれない」と語った。