全2643文字

米テスラ(Tesla)が繰り出した電気自動車(EV)「モデル3」には「ボディー・コントローラー(BC)」と呼ぶ基板群がある。車両に散らばるECU(電子制御ユニット)を集中させた部品だ。この採用の結果、ワイヤーハーネスが激減し、ヒューズが消えた。BCとはどのような部品なのか。技術者らとともに迫った。

 前回の記事はこちら

 ボディー・コントローラー(BC)の基板についても調査した。基板はChampion Asia Group製とみられる。FBCが8層、LBCとRBCは6層だった(図1図2)。

図1 フロント・ボディー・コントローラー(FBC)の材料構成
図1 フロント・ボディー・コントローラー(FBC)の材料構成
FBCの一部を検査用に切断し、基板層の構成を確認した。レイヤー数は8である。特徴の1つがプリプレグ(絶縁層)である。異なるプリプレグを組み合わせることで、厚い銅板に対応できるように工夫した可能性がある。(表と写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]
図2 ライト・ボディー・コントローラー(RBC)の材料構成
図2 ライト・ボディー・コントローラー(RBC)の材料構成
RBCの一部を検査用に切断し、基板層の構成を確認した。レイヤー数はFBCより少ない6である。図11のFBCと似た基板の特徴がある。(表と写真:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 FBCとRBCを調査の結果、判明したことは大きく3つある。両者とも構造的には同じであり、(1)材料の配合比率と厚さの異なるプリプレグの採用、(2)貫通穴(スルーホール)におけるきれいなめっき、(3)プレスフィットでのコネクタピンの形成、という特徴を持つ。

 (1)のプリプレグとは、ガラスクロスとフェノール樹脂を混ぜた絶縁材料である。このプリプレグを配線基板である銅箔の間挟み、銅箔同士の絶縁を確保する。絶縁層(コア材)の両面に銅箔2枚が張り付いた板材は銅張積層板と呼ばれる。多層基板の場合、銅張積層板をプリプレグで挟んで、重ねて熱と圧力をかけてつなぎ合わせる。6層の銅箔があれば、銅張積層板をプリプレグで挟んで2枚重ね、さらに外側にプリプレグと銅箔を重ねて作る。

 BCの基板では、銅箔の間に入るプリプレグとして異なる厚さ、異なる材料配合比率の部材が2枚使われていた。「厚さを整えるために複数枚のプリプレグを使うことは少なくないが、コスト低減のため、同じ品種、同じ厚さのものを重ねるのが一般的だ」(基板に詳しい技術者)。

 材料を詳しく調べると、FBCのレイヤー2~3の銅箔の接するところには薄いプリプレグがある。このプリプレグはガラスクロスが薄い規格で、樹脂の比率を高くしている。BCの銅箔の厚さは、大電流を流すためか、車載用の基板の中でも厚めである。そのため、銅箔に隣接する空間も大きくなる。そこで熱をかけてつなぎ合わせる際、空間に樹脂が流れ込みやすく、樹脂の流動後にガラスクロスが銅箔に接触しないプリプレグを選択したと考えられる。「多層基板の製造工程で樹脂が銅箔のパターンの間に入り込むようにこの材料を選んだのではないか」(前出の技術者)と推測する。

 この薄いプリプレグが銅箔に接する特徴は表面と裏面の銅箔以外で必ず見られた。具体的に例外を述べると、レイヤー1が厚い素材のプリプレグ1、レイヤー8が厚い素材のプリプレグ4と接している。

 なお、RBCの3層目の銅箔と4層目の銅箔の間に、2種類のプリプレグが計3枚使われている。プリプレグ2の2-1と2-3が同じ薄さの規格だ。3枚もプリプレグを入れているのは、銅箔と接する面に薄いプリプレグを置きたいためだと推測される。