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電子部品同士を配線し、回路を形成するために使われるのがプリント基板です。電子部品を内蔵する製品では、必ずと言っていいほどプリント基板が搭載されています。ただ、プリント基板と一言で言っても、その種類はいくつもあります。今回は、身の回りにあるプリント基板とその特徴について解説します。

 今回は、自動車、スマートフォン、ウエアラブル機器のそれぞれに入っているプリント基板の観察を通して、いろいろな基板があることを説明したいと思います。

【自動車】
電動化で基板の多様化進む

 最初に、自動車のプリント基板を紹介します。自動車では、主にECU(電子制御ユニット)の中にプリント基板が搭載されています。

 自動車には、数十ものECUが搭載されていますが、そこに使われている基板は、目的に応じて種類が異なります。

 例えば、エンジンやトランスミッションの制御用のECUでは、信頼性が大事なので、基板の材料は特別なもので、車載認定を取得した工場でしか製造できないようになっています。また、万一にも不具合が生じてはいけないので、非常にシンプルで頑強な構造を採ります。具体的には、裏と表の2面にしかパターンを描いていない両面基板や4層の貫通基板などを通常は採用します注1)。貫通基板とは、パターンを描く導体層と絶縁層を交互にミルフィーユのように重ねて、その層を貫通するようにNCドリルで穴を開けたものです。

注1)プリント基板において、4層や6層と表現されるのは回路パターンを描く導体層の数のことです。一般的に層数が多くなるほどに難易度の高い基板になります。

 一方、カーナビゲーションシステムや電子料金収受システム(ETC)用のECUは、高度な処理が必要で、小さなスペースに多機能なシステムを組み込む必要があります。多数のICが複雑に高密度に配置されるため、回路パターンを形成する導体層が6層もある多層貫通基板や、複雑な製造工程のビルドアップ基板が利用されます。ビルドアップ基板とは、1層ごとにレーザー加工による穴開けやパターン形成を繰り返すことによって製造される基板のこといいます。貫通基板よりも複雑な高密度配線が可能です。

 では実際の基板を見ていきましょう。図1は2017年型の日産自動車「リーフ」のメーターですが、その基板には肉眼でも確認できる貫通穴が空いており、貫通基板と分かります注2)。ボディー制御系はこのような貫通基板が使用されており、難易度の高い設計はほぼありません。理由は機能が比較的単純なことと、大きな基板でも収納するスペースが十分にあるためです。

図1 2017年型の「リーフ」のメーター
図1 2017年型の「リーフ」のメーター
一般的なプリント基板。基板上にポツポツと白く見える点が貫通穴(スルーホール)である。(撮影:車両は日経クロステック、その他はスタジオキャスパー)
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注2)基板にある貫通穴を、スルーホールと呼びます。このスルーホールは、導体層と導体層を電気的に接続する役割があります。

 自動車以外の電化製品でも、我々がよく目にするのがこの貫通基板で、例えば、大型の白物家電には高確率で使用されています。ただし、同じ貫通基板でも基板の主材料の特性が違っていて、車載用途では高耐熱・低熱膨張性の材料を使います。このように高耐熱・低熱膨張性の材料を使うのは、自動車を使用する環境が高温の場所や寒冷地など、地球上の様々な自然環境下であることと、自動車の基板の品質が人の安全に直結するためです。

 図2は、リーフの車体後方左右側面に使用されるミリ波レーダー用のアンテナ基板です。この基板に使われている材料の特性は、一般的なものとは大きく異なります。アンテナ素子や通信ICが周波数ごとに適した材料が変わるのと同様に、基板材料も高周波に対応した低誘電率、低誘電正接、低伝送損失の材料を用います。

図2 2017年型の「リーフ」のミリ波レーダー
図2 2017年型の「リーフ」のミリ波レーダー
高周波材料を使用した特殊基板。A面の特徴的な回路がアンテナの役割をする。(撮影:スタジオキャスパー)
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 高周波材料として最も優れるのはフッ素樹脂ですが、基板材料として利用するには表面が硬すぎるので加工にはさまざまな制約がつきます注3)

注3)高周波材料にはフッ素樹脂のほか、液晶ポリマー(LCP)があります。各メーカーで加工性の高い代替高周波材料の開発を進めている最中です。

 一見単純に見えるミリ波レーダー基板ですが、高周波材料は一般的な基板材料と比較して、硬く加工性が低いため、特殊なNCドリルを使用するなど高度な加工技術が必要になります。また、四角形の回路パターンはミリ波のアンテナであるため、設計から数ミクロンの狂いなく仕上げる必要があります。