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コロナ禍に伴う「ステイホーム」や「シェルター・イン・プレイス」と呼ばれる外出制限措置により、米国の日常生活は大きく変わった。仕事や学習、健康管理、娯楽、買い物など、ほぼすべてを自宅で済ますようになった。新興企業を中心に、こうした米国の新日常を支える技術の提案が盛んになっている。小売りや物流でも非接触に向けた動きが加速している。

 新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するため、米国の人々は日常生活のほぼすべてを自宅で完結せざるを得なくなった。2020年6月には外出制限が徐々に緩和しているものの、第2波、第3波の恐れから、人との接触は極力排除しなければならない。この「新日常」を乗り切るため、自宅の内外で新しい製品やサービスをユーザーが使うようになった。コロナ禍を機に誕生したものもあるが、その多くが近年、徐々に浸透してきたもので、コロナ禍を機に一気に導入が加速した(図1)。

図1 自宅の内外で変革が加速
図1 自宅の内外で変革が加速
新型コロナの感染拡大の防止に向けた外出制限によって、米国では新しい「生活様式」に移行しつつある。自宅で仕事や学習に取り組み、買い物や娯楽、健康管理、フィットネスなどもほぼすべて自宅内で済ますようになった。加えて、オンラインの買い物が急増したことで、配送をロボットカーやドローンで行う取り組みが盛んになった。スーパーマーケットも、買い物する場所から、あらかじめ注文していた商品をピックアップする場所に変貌しつつある。いずれも、もともと導入が進んでいた動きだが、コロナ禍で加速された形である。
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 特に需要が高まったのが健康分野である。例えば、病院に行く前に診断アプリを使うようになった。体調がすぐれない場合、PCR検査を受けるべきかを判別するものだ。例えば、米アップル(Apple)や米グーグル(Google)の兄弟会社である米べリリー(Verily)が提供している。明らかに感染していないのなら、不要の検査を受ける必要はない。

 新型コロナに感染したかどうかを自己判断するために、体温や血中酸素飽和度の変化を自宅で計測できる機器も人気となった。米キンサ(Kinsa)のIoT体温計はBluetoothでスマートフォンと接続し、自らの体温を記録できるほか、クラウド上で地域ごとの体温の傾向を確認できる(図2)。もともと、インフルエンザの流行を探ることが主な目的だったが、発熱状況が新型コロナの感染状況と相関があることから、品切れ状態となった。

(a)自転車の後輪側に負荷発生装置を取り付けてズイフトのサイクリングアプリをプレイする様子
(a)自転車の後輪側に負荷発生装置を取り付けてズイフトのサイクリングアプリをプレイする様子
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(b)ミラーのスマートミラーを使ってフィットネスしている様子
(b)ミラーのスマートミラーを使ってフィットネスしている様子
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(c)キンサのIoT体温計とアプリの画面
(c)キンサのIoT体温計とアプリの画面
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(d)血中酸素飽和度の変化を推定できる「Fitbit Charge 4」
(d)血中酸素飽和度の変化を推定できる「Fitbit Charge 4」
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(e)ビルド・ドット・コムのARアプリで照明を選んでいる場面
(e)ビルド・ドット・コムのARアプリで照明を選んでいる場面
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図2 健康管理を自宅で完結
外出制限によって、自宅でフィットネスや健康管理に積極的に取り組んだり、これまで店舗で購入することが多かった家具などをオンラインで購入したりする動きが盛んだ。フィットネス分野では、電子機器と組み合わせて、現実感を高めるサービスが注目を集めている。例えば、ズイフトのサイクリングアプリでは、自転車の後輪側に負荷発生装置を取り付けることで、コース上の起伏や坂の上り下りを体感できる。ミラーは、インストラクターの動作や各種情報を表示する機能を備えた「スマートミラー」を手掛けている。健康管理では、キンサのIoT体温計が人気だ。ユーザーから収集した体温データを匿名化した上で、ヒートマップとして傾向を表示する。フィットビットは、血中酸素飽和度の変化を推定できる活動量計を販売中だ。ショッピング分野では、ビルド・ドット・コムが家具や照明器具、蛇口といったものを、ARアプリによって自宅に仮想的に配置できるようにした。(写真:(a)はズイフト、(b)はミラー、(c)はキンサ、(d)はフィットビット、(e)はビルド・ドット・コムの説明動画をキャプチャーしたもの)

 血中酸素飽和度に関しては、新型コロナに感染した際、肺炎の重症度を知る目安になる。特に、自覚しづらい軽度の症状を知る上で、便利とされる。こうしたニーズを捉えて、従来のパルスオキシメーターに加えて、簡易的に変化を推定できるウエアラブル型も登場してきている。例えば、米フィットビット(Fitbit)の活動量計だ。