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前編記事「買い物は店に行ってトランクを開けるだけ、米国非接触スーパー最前線」はこちら

 ウォルマートが新興企業を巻き込みながら、自動化や非接触化にまい進するのは、リアル店舗の世界に進出してきたアマゾンへの対抗が大きい。アマゾンは近年、高級食品スーパーの「Whole Foods Market」を買収するなど、店頭販売にも力を入れている。中でも、直営小売店「Amazon Go」が、テクノロジーを満載した同社のフラッグシップ店である(図6(a))。取り扱う商品や店舗の規模は、日本のコンビニエンスストアのようだ。

(a)Amazon Go Groceryの外観
(a)Amazon Go Groceryの外観
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(b)QRコードで入場
(b)QRコードで入場
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(c)冷蔵棚の上にカメラ(従来型)
(c)冷蔵棚の上にカメラ(従来型)
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(d)天井に多数のカメラ
(d)天井に多数のカメラ
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(e)アプリのレシート画面
(e)アプリのレシート画面
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図6 進化する「Amazon Go」
生鮮食料品を売る無人店舗「Amazon Go Grocery」が始まった。従来のAmazon Goでは、棚の上にカメラがあったり、マイクがあったりした。しかし、同Groceryでは、センサーの種類が少なくなり、天井のカメラでほとんど実現しているもようだ。(撮影:シリコンバレー支局)

 2018年1月、アマゾンは本社がある米シアトルにAmazon Goの1号店を出店。その後、米国のシカゴやニューヨーク、サンフランシスコといった主要都市に拡大し、2020年6月2日時点で20店以上に達した。2020年2月末には、Amazon Goの新しいタイプの店舗「Amazon Go Grocery」をシアトルに開店した。野菜や果物、肉や魚といった生鮮食料品の品ぞろえを充実させた、スーパーマーケットに近い店舗である。それに伴って店舗の広さも従来のAmazon Go に比べて、5倍以上になった。

 Amazon Goの特徴は、精算作業がいらない、いわゆる「レジレス」型の店舗だということ。荷物も利用者が自分で袋にしまう。アマゾンはその仕組みの詳細を明かしていないため、推察を交えながらその動きを説明する。

 まず、スマートフォンに専用アプリをダウンロードし、店内にあるゲートにアプリ画面の2次元コードをかざす(図6(b))。これがユーザー認証になる。次に、入店した顧客を、天井にあるカメラユニットで撮影し続けて追跡。人物追跡用カメラユニットとは別に、棚に埋め込まれた小型カメラが、顧客が棚のどの場所に手を伸ばしたか認識し、顧客がかごに入れた商品を把握する(図6(c))。さらに一部の店舗には、棚の奥にマイクが設置されていたり、重量センサーが棚に導入されたりしている。商品に触れたかどうかをマイクで集音して判別したり、商品を手に取ったかどうかを重さで検知したりしているようだ。天井のカメラユニットには距離画像センサーとおぼしきセンサーがあり、顧客の動きを計測していると推測される。

 こうしたセンサーと画像認識技術で、顧客が手に取った商品を識別。その情報をアプリ内にあるAmazon.comのIDとひも付ける。最後に、顧客がゲートから退店するとオンラインで自動決済される。

 Amazon Go Groceryは、この仕組みをさらに進化させ、多くの作業を天井のカメラと画像認識技術のみで実施しているようだ(図6(d))。実際の店舗を観察したところ、前述の棚に埋め込まれたカメラや棚の奥にあるマイクが見当たらなかった。一方で、重量センサーは存在していた。米国では、野菜や果物は量り売りされることが多い。開店直後に記者が訪問した際には、Amazon Go Groceryでは野菜や果物を1個や1束ごとに値付けしていたが、今後、重量センサーのデータとひも付けた量り売りが可能になるかもしれない。

 このように、アマゾンはAmazon Goのレジレス技術を継続的に改善している。センサーをカメラに絞るというAmazon Go Groceryの仕組みは、既にAmazon Goの店舗に導入済み、あるいは他のAmazon Goの店舗に広げる可能性が高い。