全7648文字

不特定多数の人たちが触れるシェアカーや公共空間。表面に付いた新型コロナウイルス感染者の飛沫(ひまつ)などが、感染拡大の原因となり得る。この対策として、注目が集まるのが、「深紫外線」と呼ばれる、紫外域の中でも波⻑が⾮常に短い光によるウイルスの不活化技術である。様々な場所で導入に向けた動きが加速している。

 新型コロナの感染拡大で、シェアエコノミーは曲がり角に立っている。不特定多数の人が触れたモノに対して拒否感が生じているからだ。

 そんな中、新型コロナ対策に向けた2つの取り組みが、ライドシェア業界で注目を集めている。1つは、電動バイクのライドシェアサービスを手掛ける米ホイール(Wheels Labs)が2020年3月に発表した対策だ。電動バイクのハンドルバーとブレーキバーに、米ナノタッチマテリアルズ(NanoTouch Materials)の抗菌・殺菌をうたう材料「NanoSeptic」でコーティングを施した(図1)。その効果や仕組みの詳細は不明だが、同社によれば、同材料に光が当たることで抗菌・殺菌効果を発現するという。そのため、同材料の効能成分は酸化チタンなどの酸化物による光触媒だとみられる。

図1 抗菌材料でシェアバイクの利用の不安をなくす
図1 抗菌材料でシェアバイクの利用の不安をなくす
抗菌・殺菌をうたう材料「NanoSeptic」でコーティングを施したホイールの電動バイク。(画像:ホイール)
[画像のクリックで拡大表示]

 もう1つは、中国バイドゥ(Baidu、百度)のロボタクシーでの取り組みである。同社は、ロボタクシーに体温測定装置と紫外線ランプを装備させた(図2)。同社は2019年9月から湖南省長沙市でレベル4の自動運転機能を備えたロボタクシー「Apollo Robotaxi」を45台利用した試験サービスを実施している。2019年内で乗客数は既に1万人に達したものの、新型コロナウイルスの影響で一時休止。それでも、2020年3月に再開を果たした。その際、新型コロナの感染拡大の予防策として導入したのが先の取り組みである。体温測定装置は後部座席側に車外に向いて取り付けられており、乗車前の乗客の体温を測定し、異常があれば音声で警告する。赤外線を利用し、30~50cm離れた距離から計測して0.4秒以内に結果を出す。

(a)体温測定装置と紫外線ランプの搭載位置
(a)体温測定装置と紫外線ランプの搭載位置
[画像のクリックで拡大表示]
(b)車内に搭載された紫外線ランプ
(b)車内に搭載された紫外線ランプ
[画像のクリックで拡大表示]
図2 体温測定装置と紫外線ランプでロボタクシーの安全性を確保
バイドゥは、中国湖南省長沙市で「Apollo Robotaxi」の試験サービスを実施しているが、この車両に対策を施した。(画像:バイドゥ)

 紫外線ランプは車内に設置され、車内全体を殺菌・不活化する。光出力は16Wで、1cm2当たりの強度は55µW。同ランプを使えば、30分で車内全体を殺菌・不活化できるという。バイドゥはこの装置をコロナ禍後も設置するとする。

「深紫外線」の導入が相次ぐ

 これら2つの取り組みのうち、今まさに米国の社会インフラにならんとしているのが、紫外線による殺菌・不活化技術だ。中でも、「深紫外線」と呼ばれる、紫外域の中で波⻑が短い光による殺菌・不活化技術が主役である。特に「UV-C」と呼ばれる100n~280nm(ナノメートル)の光に注目が集まっている。深紫外線光は、もともと、細菌やウイルス、カビ対策に医療機関や食品加工で利用されていたほか、工場排水やプールの水など、水殺菌の分野で導入が進んでいた。コロナ禍をきっかけに医療機関での利用が増加。さらに、さまざまな分野で、深紫外線を利用しようとする動きが始まっている。

 深紫外線による殺菌・不活化装置の市場はコロナ禍が起る前から今後急成長すると見込まれていた。インドの調査会社であるマーケッツアンドマーケッツ(MarketsandMarkets Research)は、2020年3月に発表した調査レポートで、同装置の市場規模が、2020年に29億米ドルに達すると予測した。その後、年率平均12.3%で成長し、2025年には53億米ドルに達すると見込む。この予測は主に2019年の調査を基にしているため、コロナ禍によってさらに予測が上振れするとみられる。