前編記事「 標準装備になるドラレコ、録画装置から「世界の認識」装置へ」
現在のドラレコ製品について知るために、人気4機種の2カメラモデルを分解・調査した(図3)。対象は、JVCケンウッド製「DRV-MR745」「同740」、コムテック製「ZDR026」「ZDR-015」だ。BCNが調査した2020年5月のランキングでそれぞれ3位、5位、7位、1位を獲得した製品だ(表1)。
2カメラモデルの製品は、前方のフロントユニットに後方のリアユニットをケーブルで接続する構成である。フロントユニットには、イメージセンサーに加えメインのプロセッサーや記憶媒体を搭載する。リアユニットにはイメージセンサーや映像伝送用の画像処理プロセッサーを搭載する。電源は、フロントユニットがシガーソケットから得て、ケーブルを通じてリアユニットに供給する。
前方の映像はメインのプロセッサーに送られ、そのまま処理されることが多い。後方の映像は、リアユニットの画像処理プロセッサーでエンコード(符号化処理)してケーブルで伝送され、フロントユニットのビデオデコーダーで受信してデコード(復号化処理)されるのが一般的である。
今回分解した4機種では、この画像処理プロセッサーとビデオデコーダーに米Techpoint製の半導体が多く搭載されていた。同社の製品が特徴的なのは、監視カメラ用の独自の伝送規格である「HD-TVI(High Definition Transport Video Interface)」を使用している点だ。
この規格を使う場合、撮影した映像をリアユニットでアナログ変換して伝送し、受信したフロントユニットでデジタル変換してデジタル信号に戻す。デジタル信号のまま伝送するのに比べて、曲げやノイズに強いという。
JVCケンウッドは、ドライブレコーダー(ドラレコ)の国内トップメーカーの1社だ。以前からカムコーダーや放送向けの業務用カメラを手掛けてきたため、特に光学系や映像技術の部分で強みを持つ。「ドラレコの主要部品であるCMOSイメージセンサーやレンズ、LSIなどに精通し、製品に適した部品選定が可能で、映像処理のノウハウを持つ」(JVCケンウッドの吉川悟史氏)ことが、ドラレコ開発で生きているという。例えば、ドラレコでは対向車のライトやトンネルの出入りなどで映像が白飛びしないよう、急激な明るさの変化に強いHDR(ハイダイナミックレンジ)への対応が求められるが、ここにそのノウハウが使われている。同社はカーナビなどの車載システムも手掛けており、カーナビにドラレコ機能を取り込める製品も既に開発済みだ。
ドラレコに対するニーズは徐々に変化している。同社の購入者調査によれば、2016年は「高画質」「GPS搭載」「駐車監視」などが購入理由の上位を占めていたが、2019年には「前後録画」「高画質」の2つが、他を大きく引き離してトップに立った。
今後のドラレコに対して吉川氏は、「クラウドとの連携や映像を解析することで実現できる新たな機能でニーズを作りたい」と語る。特に注目しているのが、事故を起こさないための安全認識機能だ。今後も、車両では車載カメラやDMS(ドライバーモニタリングシステム)、ADAS(先進運転支援システム)などが高度化していく。ドラレコが車両の標準装備となる中で、こうした機能とドラレコが今後融合していく可能性も高いとみる。