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2020年4月、パナソニックの研究組織「Aug Lab(オーグ・ラボ)」が、忙しく生きる現代人に「ぼーっ」とできる時間を提供するというコンセプトの製品を発表した。風のそよぐ様子を再現するデバイス「TOU」だ。開発に携わったのがコネル(東京・中央)。広告事業を手掛ける傍ら、様々な製品のプロトタイピングにも挑戦している。(聞き手=野々村洸)

出村 光世(でむら・みつよ)
出村 光世(でむら・みつよ)
2011年、アクセンチュア所属時にコネルを創業。東京、金沢、ベトナムを拠点とし、アート、プロダクト、マーケティングなど領域に縛られずにさまざまなプロジェクトを推進。プロトタイピングに特化した新施設「日本橋地下実験場」を東京の拠点として、30を超える職種のクリエイターとともに活動を行う。(写真:日経クロステック)
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 テクノロジーは社会に欠けた部分を埋め、私たちの日々の生活を豊かにしてくれています。ただ一方で、人々は何か欠けた部分があるからこそ、創造性を働かせたり、心を動かされたりするのではないかと考えています。「不便」がなくなれば「工夫」がなくなり、「不条理」がなくなれば「疑問」が失われます。そして「不意」がなくなれば「驚き」がきっと消えてしまうでしょう。“合理的なテクノロジー”が広がっていき、多くの「不」がなくなっていく中で、どうすれば私たちは「人間らしさ」を保てるのでしょうか。

 当社にはプログラミング・写真・音などを活用して製品を生み出すクリエイターが在籍しており、その職種数は30を超えます。そして広告事業を手掛ける傍らで、技術とデザインを組み合わせて、私たちが感じる欲望・社会課題を表現した製品も開発しています。基本的にそうした製品の目的は販売ではなく、発表や展示になります。私たちが自由に創造した製品の公開を通して、同じ課題などを抱えるさまざまな業界・企業などに共感が広がり、新たなつながりのきっかけになるからです。

 技術とデザインを掛け合わせる試みの中で、当社はテクノロジーと「不」の関係の問いに向き合うために「ランダム家電」シリーズを生み出しました。ランダム家電はその名の通り、人の意志に寄らず無作為に動作する家電です。そして現在、研究開発の一環で取り組んでいるのが空間型デバイス「TOU」になります(図1)。

図1 コネルとパナソニックが共同で開発する空間型デバイスが「TOU」。中央奥の壁にかかっているのが「TOU」。磁性を有する表面材と無数の電磁石によって、風でそよぐ様子を表現する。
図1 コネルとパナソニックが共同で開発する空間型デバイスが「TOU」。中央奥の壁にかかっているのが「TOU」。磁性を有する表面材と無数の電磁石によって、風でそよぐ様子を表現する。
(出所:コネル)
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